北朝鮮、「100年に1度の大干ばつ」は本当か 「農作業に支障なし」という地域も多数?

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そのため黄海南道など、特に黄海沿岸に近い農場では塩害が生じてしまったようだ。実際に、農業省コンピュータ室のカン・ユンミ技師(36、女)は現場を視察し、「田植えの時期に育つべき稲が塩害によって枯れてしまった農場がある」(写真)。塩分が高い水が流入してそのまま残ってしまった結果だと説明する。

今年6月時点では、このような地域が北朝鮮に見られた。6月10日に北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が気象水門局を現地指導、ここで「気象観測事業が現代化、科学化されていないために誤報が多い」「短期、中期、長期の各予報の正確性を保障するため、科学研究事業を深め、世界各国との科学技術交流事業を深めるべき」と発言したことが報じられているが、農業生産のための気象情報の拡充が切実に求められているようだ。

一方で、水不足は確かだが今年の作況は「100年に一度」と言うほど深刻なレベルではない、という指摘もある。

米国の対北朝鮮放送である自由アジア放送(RFA)は、5月下旬ごろから内部情報筋や中朝を往来する中国人や北朝鮮人の話を引用しながら、水不足の深刻さを報道していた。一方で、6月下旬から7月に入ると、「水不足はそれほど深刻ではない」という、内部からの情報を引用した報道が増えてきている。

干ばつ被害が少ない地域も

たとえば、北朝鮮北部の咸鏡(ハムギョン)北道や両江(ヤンガン)道などでは、従来からの品種改良や治水の効果などで水不足の影響が軽く、「農作業に何ら問題はない」という声が出ているという。

最近では、米国のコンサルティング会社の農業研究者が「乾燥した天気が続いているのは事実だが、最悪の水不足かどうかは同意できない」と指摘、「『100年に一度の水不足』は誇張した表現ではないか」と疑問を呈している。

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