サイゼ株主優待廃止を歓迎した投資家の意識変化 一部投資家のパニック売りを吸収して株価は急反発

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筆者はサイゼリヤなど複数の外食チェーン株を保有していますが、会計時に株主優待券をすんなり利用できるとは限りません。チェーンにもよりますが、かなり高い確率でレジ係が店長やチーフを呼んで「株主優待券ってどういう風に処理するんですか」と処理方法を確認します。

近年、深刻な人手不足を受けて、レジ作業の効率化・省人化が外食チェーンの大きな課題になっています。丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスは、この7月からそれまで紙だった株主優待券をカード化し、楽天ポイントの付与を停止しました。

他にも多くの外食チェーンで改善の動きが始まっていますが、そもそもサイゼリヤのように株主優待制度をやめることが、もっとも効果的な解決策でしょう。

今後は、機関投資家だけでなく、店舗を運営する店長・スタッフからも「株主優待制度を廃止してほしい」という声が上がり、優待廃止に踏み切る企業が現れるでしょう。

株主優待制度を続ける企業は、店舗運営の効率を犠牲にしてまで続ける意味があるのか、株主総会などで説明する必要が出てきます。金融庁や東証も、企業が実施する株主優待が本当に合理的なのか、厳しくチェックするようになるでしょう。

そうしているうちに、「そこまでして株主優待制度を維持するのはばかばかしい」というのが企業のコンセンサスになり、10年後には株主優待制度は日本から姿を消しているでしょう。

世界で通用する外食チェーンに

ところで、サイゼリヤの株主でもある筆者は、同社の株主優待制度の廃止を全面的に支持します。

お家芸だった自動車産業ですらもはや国際競争力を失いつつある衰退途上国・日本において、外食チェーンはインバウンドと並ぶ数少ない有望産業です。多くの外食チェーンがグローバル展開しており、サイゼリヤはすでに日本よりも海外でより多くの利益を稼いでいます。

今後、日本の外食チェーンが真のグローバル企業として発展するうえで、日本に固有の株主優待制度で日本の個人株主だけを過度に優遇するというのは、まったく合理的ではありません。

個人的には、今回のサイゼリヤの動きが他社にもどんどん波及し、株主優待制度がなくなり、日本が誇る外食チェーンが世界で認められるようになることを期待しています。

なお、サイゼリヤの株価は、株主優待制度の廃止を発表した翌日の7月11日に一時、前日比9%安まで下げました。しかし、すぐに盛り返し、現在7月10日終値を上回って推移しています。

会社四季報オンラインの株価チャートより作成

サイゼリヤの業績が好調なせいもありますが、パニックになった一部の個人株主が手放しただけで、機関投資家は上記の理由で今回の制度廃止を歓迎しているのでしょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/takeshi.hioki.10
公式サイト:https://www.hioki-takeshi.com/
 

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