日経会長が惚れ込んだ「FTのCEO」とは何者か

ジャーナリスト集団を率いるリーダーの素顔

 ――グローバルなビジネスに携わっていれば、中国であっても、英語で情報を得ている読者が多いのでは? 中国語版の新聞を出すとドイツ、フランスと同様、ローカルな媒体になる心配はないですか。

現在オンラインにおいて、もちろんローカルな中国のニュースも提供していますけれども、ほとんどがグローバルなニュースです。グローバルなエディトリアル(編集)のチームが、英語のニュースを中国語に翻訳して提供している。中国語に翻訳したとしても、グローバルな視点を維持することはできると思います。

――FT.comは有料サービスですが、大学生が無料で読めるサービスを行っていますね。

日本の学生からも申し込みがあります。学生は次世代のビジネスエグゼクティブになるわけですから、FTのブランド自体に慣れ親しんでもらうという点で重視しています。

FT.comは昨年秋にリニューアルした。学生だけでなく一般の読者も、いくつかの記事を無料で読めるようにしました。ただし読む記事が月5本を超えると会員登録が必要になり、30本を超えるとそこから有料になる。このリニューアルで、会員登録数は昨年11月には4万だったものが40万になりました。

しかし、われわれの提供する情報は大きな価値があるから、有償、しかも高い値段で売っていくのが基本です。ほかの新聞社が値段を下げている中で、われわれは値段を逆に上げているんです。昨年、イギリスでは1部の値段を1ポンドから1・5ポンドに引き上げました。なぜ値上げをするのか、と周りからは言われたけれど、値上げ後も購読者は伸びている。値上げしても読者がついてくるということは、FTに対する読者のロイヤルティが高いことの証明になるわけです。

――FTに限らず、WSJも有料のネットサービスを成功させています。しかし、これは例外であって多くの新聞メディアはネットを無料にしています。経済情報以外は有料サービスが難しいのでしょうか。

焦点がビジネスやファイナンスに特化された情報を、多くの読者が重要視していると思います。一般的なニュース情報は“コモディティ”になってしまっているので、読者は価値を見いだせない。われわれはビジネス、ファイナンスに焦点を当てており、コモディティに手を出すつもりはありません。

――FTの最高責任者を決めるのは親会社のピアソン社の経営陣です。ピアソンはリディングさんにどんなミッションを課したのですか?

私はFTに20年おりますので、ピアソン社は私がどういう人間であるかをよく知っている。私のこれまでの経験がグローバルであることが評価されているし、さらにグローバル化を進めていくことが私に与えられた課題です。

FTに限らず、ピアソンは書籍出版(ペンギン)、教育など多くの事業を展開しているが、各社に共通の方針はグローバルな拡大です。ここに来る前にインターネットでプレスリリースを見たのですが、ピアソンは中国の語学学校を買収すると発表をしています。この例からもわかるように、ピアソンはグループを挙げて、中国を含むアジアを重視しています。それだけ、市場のポテンシャルが大きいと考えているのです。

(山崎豪敏、山田俊浩 撮影:尾形文繁)

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