松下、YKK、大震災 街の電器屋は逆境で育つ--ケーズホールディングス会長 加藤修一《中》
でも加藤は、買収を失敗とは思っていない。「売上高100億円のよつばでもこんなに苦しいなら、もっと小さい会社は大変なはず」。売上高20億~30億円規模の同業者8社を勉強会に誘い、その後にフランチャイズ化していった。
「YKK戦争」勃発 5円セールで戦い抜く
目の前には、強敵が迫っていた。栃木県に本社を構えるコジマ、そして群馬県のヤマダだ。両社は北関東で、破竹の勢いで出店攻勢を展開していた。茨城県が地盤のケーズも、ひとごとでは済まされない。火の粉を浴びる立場になった以上、全面戦争以外に選択肢はない。
最初に仕掛けてきたコジマは、手ごわかった。新店オープンの際は「5円セール」と銘打って、目玉商品で客を呼び込む。開店前には長蛇の列ができ、客が客を呼ぶという勝ちパターンを身に付けていた。
後を追うヤマダも黙っていない。「5円」「1円」のセールに加え、「コジマさんよりも安くします」と高らかに宣言。2社が火花を散らす様子はメディアでも取り上げられ、家電の激安店といえばコジマかヤマダとのイメージが浸透した。
加藤は納得できなかった。「5名限定の5円セールであり、すべてのお客さんが対象ではない。イメージだけで安いというのはだましでしょ。そんな商売は、絶対にうまくいきっこない」。だがあえて、「5円」で対抗した。ケーズは安くないというイメージが浸透することは、何としても避けたかった。
効果はてきめん。150坪の店内に何千人も集まり、「死ぬかと思った」。三つどもえの戦いは「YKK戦争」と呼ばれるようになり、安売り競争に仲間入りした。