若宮氏は、今後10年のうちにイラン政治に起こりうるのは、次の3つのシナリオであるとする。
今後10年、3つのシナリオ
②イスラム体制を維持したままでの民主化
③イスラム体制による一層の締めつけ強化(274ページ)
今後10年というのは、85歳である最高指導者ハメネイ師の死がターニングポイントになると考えられるからである。本書はライシ大統領が急逝する前に発刊されているので、こうした変化が早まる可能性は否定できない。
最後に1つのエピソードを紹介したい。2005年、教皇ヨハネ・パウロ2世の逝去に伴い、バチカン市国で行われた葬儀での出来事である。
世界80カ国の国家元首が参列する中で、イスラエルからはモシェ・カツァブ大統領が参列した。カツァブ大統領はイラン生まれで、6歳の頃にイスラエルに帰還したユダヤ人である。
カツァブ大統領の近くに座ったのが、イランのモハンマド・ハタミ大統領だった。2人は同じイランのヤズド県出身であり、ペルシア語で談笑したという。地元話に花を咲かせたのだろうか。
イランとしては、自国の元首が敵国の元首と言葉を交わしたのだから大問題である。イラン政府はこの事実を否定したが、2人が笑顔で会話するシーンは世界に放映された。
この話に象徴されるとおり、イスラエルには多数のイラン系ユダヤ人がいる。ガザのハマスやレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派を陰で支援し続けてきたイラン政府が、40年以上続けてきた対イスラエル政策を易々と変更することはないだろう。
それでもなお、賢明なイラン国民がこの先、イスラエルとの関係において、破壊ではなくかつての繁栄の道を選択することを期待したい。
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