イランがイスラエルを強く敵視する理由は何か 今後10年、イランに起こりうる3つのシナリオ

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イラン人はかなりシビアに自国の体制を認識しているというのが現実のようである。そして、イラン現政権が目の敵にするイスラエルについても、次のように述べられている。

信じられないかもしれないが、2023年以来続くイスラエルによるガザ侵攻では、若者を中心に多くのイラン国民がイスラエルを熱狂的に支持している。/もちろんその理由は、パレスチナ支援を続けるイラン政府がそもそも彼らの敵だからで、ここまで来るともはや「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」式の感情論に思えなくもない。/ただ、考えてみればパレスチナ人やレバノン人も、イスラム教徒とはいえ一般のイラン人にとっては所詮、外国人である。「イラン政府は、外国人ではなく、まずは食うや食わずのイラン人を救え」という論理は至極まっとうではある。(176ページ)

2022年の反政府デモ

経済制裁の煽りを受け、現政権を嫌悪するイラン国民の本音は、政府の政策とはかなり乖離しているようである。自国から1000キロメートル以上離れた遠い土地の問題よりも、貧困にあえぐ自国民の救済を考えてほしいという訴えはもっともだろう。

本書は2022年の反体制デモから話が始まる。在イランのクルド人女性マフサ・アミニさん(22)が、頭髪を覆うベールを適切に着けていなかったとしてイランの風紀警察に逮捕され、その後死亡したという事件が発端のデモである。

これがきっかけで、ベールの自由化を求めて各地でデモが起きた。今も女性のベール着用義務がなくなったわけではないが、「なし崩し的な自由化の波はもはや食い止められない、というのが大方の見方」(23ページ)であるという。

こうした反体制の民意が今回のイラン大統領選に反映されたのだろうか。そうであれば、イスラムからの自由化の動きが現政権に影響を与えるのだろうか。それはまったくの甘い幻想なのだろうか。

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