ケニアに学びたい、一歩進んだ「性教育」 布ナプキンを男女一緒に作る意味

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たとえば、それまで増加傾向にあった。乳幼児死亡率は2003年の1000人当たり77人から2009年に52人に減少、5歳未満児死亡率は2003年の115人から2009年には74人に減少しています。

HANDSの北島慶子さん

前出のケリチョー郡にある小学校では、かつて発生していた小学生の妊娠が、地域を巻き込んだHANDSの取り組みによって、なくなったそうです。

大人が子どもにしていいことと悪いことを教えるだけでなく、問題の根っこにある文化ごと、地域ぐるみで変えていく。子どもだけでなく大人が変わる時、子どもの置かれた状況が改善されていく……。経済状況も健康状態も、ケニアよりはるかに恵まれた日本の社会でも、生かせる考え方であり、実践と言えそうです。

継続的な動機づけが重要

帰り道も凸凹でした。雨が降ってきたので、帰途に就く人がたくさん乗った、ぎゅうぎゅう詰めの車の中、「今、私たちの団体が保健ボランティアに金銭的な報酬を渡すことは可能ですが、私たちの事業は永続的なものではありません。事業終了後、地元政府が報酬を払えないことは明らかです。保健ボランティア活動の継続性を考えて、活動への見返りは外国のNGOからの一時的な支援金ではなく、継続的な動機づけとなるよう工夫しています」と北島さんが話してくれました。

布ナプキン講習会では、地域の人々の知識や技術の獲得と普及、ボランティアが地域住民から尊敬や感謝を得ること、地域保健の向上、そして布ナプキンの販売による収入という成果につながっています。

車に同乗していたのは、洋服の仕立て屋さん。地域では珍しい、ミシンを自宅に持つ彼女は、布ナプキンを入れるポーチを工夫して作って皆に見せるなど、いろいろな提案をしたそうです。

地域の資源を使って持続可能な解決方法を提案する。提案した方法を、参加者が改善して活性化する様子を一歩引いて見守る……。地味で、かつ着実に現地の人たちに役立つ支援に取り組む北島さんの姿を見て、こういう人たちが「日本のイメージ」を作っているのだろうな、と思いました。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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