秋に発売「スズキの新型SUV」は期待できるか? 「フロンクス」試乗でわかった開発陣の本気

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同氏はバレーノの開発も担当しており、日本でのバレーノは販売が伸びなかったことを反省点として挙げた。

お話を伺ったチーフエンジニアの森田祐司氏(筆者撮影)
お話を伺ったチーフエンジニアの森田祐司氏(筆者撮影)

インドではちょうどいいサイズのハッチバック車で走りも良かったが、日本では予防安全技術における「乗って安心安全」の観点での装備が不十分だったと分析する。クルマとしての素性は良くても、日本市場での特性にマッチしなかったのだ。

バレーノは2022年にインドでフルモデルチャンジを実施し、日本導入についても検討したが、2020年代に入ってからの日本は、200万円台のコンパクトSUVが拡大市場に。そこで、新型バレーノではなく、2023年にグローバルモデルとして登場したフロンクスを日本向けにチューニングして投入することを決めた。

2代目バレーノとフロンクスは、基本構造を共有しながらデザインによってハッチバックとクーペスタイルSUVに振り分けた形だ。販売国によって、パワートレインの違いがある。

フロンクスと基本メカニズムを共有する2代目バレーノ(写真:スズキ)
フロンクスと基本メカニズムを共有する2代目バレーノ(写真:スズキ)

そうはいっても、グローバルモデルを販売する国や地域に応じて作り分けることは難しい。それについて森田氏は、「地域環境の違いは、ユーザーの(商品に対する認識の)違い。日本では初代バレーノでの反省を生かして、日本でも求められることを(改めて)意識した」と、日本での再挑戦の背景を明らかにする。

走りのコスパは極めて高い

日本のユーザーや販売店は、軽自動車というコストパフォーマンスが極めて高い商品に触れているため、コンパクトSUVに対する評価基準のハードルも高い。そうした日本での需要を、円安の今、インド生産車をベースに作り上げることの難しさがある。

最後に改めて、プロトタイプを試乗した感想をまとめておこう。低速で走っても少しペースを上げて走っても、実に取り回しが良く、クルマの動きの先読みができるため、ドライバーの疲れが少ない印象だ。

さらにいえば、クルマの基本特性である「走る・曲がる・止まる」の構成要因である、車体、サスペンション、タイヤ、エンジン、トランスミッションの能力を、可能な限り幅広く引き出していると感じられた。

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そうした走りの観点から、フロンクスはコンパクトSUVとして「コスパがとても良い」と言えるだろう。販売を終了した「エスクード」や「SX4 S-CROSS」ユーザーの受け皿となるだけでなく、新たな客層を開拓する実力は持っている。

今後、発表される価格についても、ライバルとの競争が激化する国内コンパクトSUV市場において戦略的なものとなることを期待したい。

【写真】改めて新型フロンクスのデザインを詳しく見る
桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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