コーナーへの進入は、クルマのサイズ感とハンドリングとの実感のズレがなく、無理にコーナーへ向かってまわり込むようでもない、実に自然な旋回をする。またコーナーの出口でも、リアがしっかりと付いてくる動きだ。
ロール量も適度で、タイヤに頼って旋回しているのではなく、サスペンションが有効的に作動する、いわゆる「足がよく動く」クルマに仕上がっている。
開発者によると、サスペンションの狙いは「後席の乗り心地と直進安定性の両立」だという。
SUVでもクーペスタイルの低重心を生かして、タイヤ、コイルスプリング、ショックアブソーバー、電動パワーステアリングを日本の路面に合わせてチューニング。
それにより、レーンチェンジやコーナーリング時のロール、荒れた路面での乗員の揺れを抑えつつ、マンホールや橋の継ぎ目のような段差通過時のショックを低減した乗り心地を実現している。また、直進走行時のステアリングの中立位置がわかりやすく、安心感のある操舵力特性も得ている。
こうした走りの良さは、フロンクスだけで成立するものではない。「スイフト」など、走りの良さに定評のあるスズキ各モデルで培った知見が、脈々と受け継がれ、実現したものだ。
バレーノでの反省を生かして
次いで、4輪駆動モデルに乗った。後輪に駆動力を伝えるドライブシャフトなどによる重量増があるため、上り坂ではFF車と比べて、トランスミッションがキックダウンするタイミングが、若干早いようだ。だが、クルマの動き全体としてみれば、決して重ったるい印象はない。
コーナーリングでもFF車と同様、実に素直に旋回するし、エントリークラスの4輪駆動にありがちな、ステアリングの抵抗感が増す感触もない。あくまでも、ハンドリングの手応え感が、しっかり出ている。
こうした日本向けのチューニングが的確に行えるのは、クルマとしての「素性の良さ」があってこそだ。
フロンクスの開発総責任者である、商品企画本部 四輪B・C商品統括部チーフエンジニアの森田祐司氏に話を聞くと、2016年から2020年まで日本で発売された、インド生産の「バレーノ」の話が出た。
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