ギリシャ危機、支援実施には3つの壁がある 改革関連法案可決でも危機は終わらない

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IMFは2012年秋にも債務の持続可能性が確保できないとし、公的部門の債務再編が行われなければ、ギリシャ支援から手を引く可能性を示唆したことがある。その際は、EU側が将来的なギリシャの債務負担軽減を約束することで、支援プログラムにとどまった。

ドイツ議会ではEUの行政府である欧州委員会がギリシャ支援に甘すぎるとの批判があり、IMFが融資に参加することをギリシャ支援の絶対条件と主張する議員が多い。仮に債務再編を巡って意見の溝が埋まらず、IMFが支援から手を引くことになれば、今後も支援決定や融資実行の度に必要なドイツ議会での事前承認が通らないリスクも出てきかねない。

政局が流動化、再び反緊縮政権の誕生も

第3のハードルは、さらなる緊縮を受け入れることで、ギリシャ国民の反緊縮機運がさらに高まる恐れがある点だ。

16日未明の改革関連法案の採決では、緊縮受け入れを拒否する多くの与党議員が反対票を投じた。急進左派連合の149議員のうち、32議員が反対票を投じ、6議員が棄権し、1議員が欠席した。与党がこのままの形で継続するのは困難とみられ、支援協議がひと段落ついた秋や冬にも、議会の解散・総選挙が行われる可能性が高い。

追加支援の条件でさらなる緊縮を実行に移す必要があるほか、銀行の営業再開や資本規制の解除にはまだ相当の時間が掛かるとみられ、ギリシャ国民が感じる緊縮の痛みは一段と増すことが予想される。

チプラス首相の急進左派連合か、同党からの離党者が新たに結成するであろう新党か、不気味な存在感を示す極右政党「黄金の夜明け」かは分からないが、次の総選挙でも反緊縮を掲げる政党への支持が集まる可能性がある。緊縮見直しを掲げる政権が再び誕生した場合、債権者側のいら立ちが高まり、支援打ち切りやユーロ離脱観測が再浮上する恐れがある。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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