安保法案、「与党分裂参院」で波乱は起こるか 「強行採決」の代償は小さくない
法案が参院に送られてからは、どうなるのだろうか。
参院は「選挙制度改革問題」を抱えており、10合区12増12減案を提唱する公明党に民主党が相乗りしている。合区について党内の反対が強い自民党は、2合区10増10減案の維新の党から、「こちら側に乗らないと、公明・民主側に付く」と言われてやむなく同調している。つまり、与党が分裂しているのだ。
さらに、11合区案を提示していた脇雅史前参院自民党幹事長が「憲法違反になるような法案を作るわけにはいかない」と会派を離脱するなど、混乱の要素がある。
さらに2016年の参院選を控えて存在感を出すために、衆院と同様の100時間の審議を求める声も出ている。「60日ルール(参議院に送付された法案が60日以内に議決されない場合、衆議院は再議決により法案を成立させることができる憲法の規定)」の適用を目指して、時間が過ぎ去るのを待つだけ、とはいかない可能性もある。
安倍首相が7月9日の夜に次世代の党の全議員と会食したのは、こうしたことへの懸念からだろう。6名の参院議員を擁する同党はもともと安保関連法案について賛成を表明していたが、さらに安倍首相が直接に協力要請することで、確実なものにする必要があったのだ。
衆院に戻って来た時が「戦いの本番」
一方、野党側は「60日ルール」の適用によって法案が衆院に戻ってきた場合の対抗策を考えている。たとえば委員長の不信任決議案。特別委員会委員長には法律上の解任規定がなく、不信任決議案を可決されても法的拘束力があるわけではないが、委員長は自らの進退を決するなど政治的・道義的責任を負うことになる。
「手持ちのカードは限られているんだから、何も最初からカードを切ることはない」。枝野幸男民主党幹事長はこう言う。要するに野党は「60日ルール」で安保関連法案が衆院に戻って来た時が「戦いの本番」と見ているわけだ。15日夜に都内で開かれた民主党の近藤洋介衆院議員のパーティーで、岡田代表は次のように述べた。「審議すれば審議するほど、内閣支持率が下がっていく。6割の反対が8、9割までになれば、法案を撤回させられる」。
16日の衆院本会議で法案が通れば、「60日ルール」が適用されるのは9月14日。会期末の9月27日までは約2週間ある。しかし、審議をできる時間はほとんどないだろう。連休中は審議できない上、安倍首相が国連総会に出席するなど公務が入っている。さらに自民党総裁選の予定もある。
安保関連法案は成立する可能性が高いものの、波乱要素がないわけではないのである。
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