モスが「牛一頭買い」でバーガーを作る納得の理由 真鯛や黒毛和牛をテーマにヒット商品を連発

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もう1つは2022年12月に100万食限定で発売した「一頭買い 黒毛和牛バーガー」(690円)。牛肉価格の上昇に対応した商品だった。

牛肉価格が高騰する中で発売した「一頭買い 黒毛和牛バーガー」。新たな定番として今年も販売する可能性がありそうだ(写真:モスフードサービス)

名前の通り、黒毛和牛を一頭丸ごと買い付けたことで、サーロインやヒレなどの高級部位、希少部位も調達。部位を選んで仕入れるよりもコストを抑制できたという。全19部位を使用するなど高級感を出しつつも、価格を抑えたバーガーとなった。

こちらも真鯛バーガーと同様にヒットし、翌2023年11月に復活。ソースを軸にグレードアップし、790円と860円の2種類の高級バーガーとしての販売となった。

モスフードサービスの商品本部長・安藤芳徳氏も手応えを感じているようだ。「以前はターゲットばかりを意識していたが、原材料を発想の起点とした商品開発にも可能性がある。プロダクトアウトと(顧客の要望に合わせた)マーケットインの割合を7対3ぐらいにしていくことが理想だと思っている」。

第3のヒットバーガーの食材は?

実は、モスバーガーはもともとプロダクトアウトが強みだった。ただ、フランチャイズの店舗が9割以上で、直接顧客の声を聞くことは難しかった。そこで2019年に、より顧客が求める商品を開発するため、商品開発とマーケティングの部署を統合し、マーケティング本部を創設した経緯がある。

当時の課題だった「誰をターゲットに何を売るか」という意識が社員に浸透したため、今回再び、組織改編でプロダクトアウトを強化することになったわけだ。モスバーガーにとっては方針転換というより、仕入れの状況に合わせた開発方針の「調整」が正しいかもしれない。

前述のように、食材を起点としてもヒットするかは別の問題だ。具体的な商品が決まらなければ、マーケティング戦略も決まらず、オペレーションも構築できないという難しさがある。それだけに、真鯛や黒毛和牛のような、消費者に広くアピールできる商品を開発していくことが求められる。

定番のモスバーガーやてりやきバーガーなど、多くのロングセラー商品を生み出してきたモスバーガー。食材先行の商品戦略でも強みを発揮できるか。その開発力が試されている。

金子 弘樹 東洋経済 記者

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かねこ ひろき / Hiroki Kaneko

横浜市出身で早稲田大学政治経済学部を卒業。2023年4月東洋経済新報社入社。現在は外食業界を担当。食品ロスや排出量取引など環境問題に関心。

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