アイフォーンの重要な点は、タッチパネルというよりは、背後にインターネットがあることだ。アイフォーンによって、個人向けのクラウドコンピューティングが始まっている。これがブレイクスルーであることは間違いない。
問題は、日本の企業がこうした意味でのブレイクスルーを実現できなかったことである。スマートフォンは、アイフォーンの基本コンセプトをまねして、細部に変更を加えているだけだ。自動車に至っては、基本的な技術はそのままで、生産方式に「カイゼン」を加えただけである。
ブレイクスルーを実現できなかったのは、日本の企業だけではない。ゼロックスは、タッチパネル方式という技術を生み出したにもかかわらず、それをPCに応用しようとしなかった。
株式市場は鉄火場ではない
アメリカ企業(あるいはアメリカ経済)が短期志向か否かについては、拙著『大震災からの出発』(東洋経済新報社)で述べた。アメリカが近視眼的とは、1980年代末にMIT(マサチュセッツ工科大学)がまとめた『メイド・イン・アメリカ』で述べられていたことである。
日本の企業が短期的な経済条件の変化に動かされないのは事実だが、90年代以降の世界経済の大変化にも動かされなかった。つまり、日本の企業は、経済条件の短期的変化にも長期的な変化にも鈍感なだけである。要するに、マーケットの変化に対応しようとしないのである。
20年以上前、『メイド・イン・アメリカ』が日本企業を称賛したのは、買いかぶりにすぎなかった。その見解をいまだに持ち続けている人がいることに驚く。そうした見解を持っている人は、株式市場はせいぜい数カ月先のことしか考えない鉄火場だと思っているのだろう。
しかし、そうした考え方からすると、前回示した日米株価の推移はどう説明できるのだろう。