アメリカのインフレは、そう簡単には収束しない 下がりにくい「粘着性のある物価項目」に注意

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家賃の粘着性に関しては、通常契約の更新が1年に1回、または2年に1回なので、住宅価格の伸び悩みがすぐに反映されないことが理由に挙げられることが多いが、はたしてそうなのだろうか。

余談ではあるが、筆者はNYのブルックリンの自宅近くに、普段使用しないものを保管しておくための倉庫(ストレージ・ルーム、日本ではトランク・ルーム)を借りている。

ここの賃料は、前年同月に比べてなんと24.2%も上昇している。その前の1年間では15.3%の上昇だった。ストレージ・ルームの賃料は毎月ごとに契約が更新されるシステムで、なおかつ生活に直結するわけではないので、コストがそのまま反映されやすいようだ。

またそのコストは、光熱費など建物の維持費と人件費、そして保険料がほとんどを占めていると言ってよいだろう。建物の維持費はまさに住居費のことを指しているし、保険料の上昇もかなりの高さとなっている、それに人件費と、まさに現在インフレを高止まりさせている主役級の要因がすべて含まれているといっても過言ではない。

もちろんストレージ・ルームの賃料は、アパートの家賃ほどに値の張るものではないし、CPI全体への影響もそれほど大きなものではないだろう。それでもこうした大幅な上昇を見る限り、インフレが簡単に鎮静化するとはとても思えないというのが正直な感想だ。

FOMCの判断は、間違っているのか?

7月5日に発表される6月雇用統計も引き続き警戒が必要だ。6月7日に発表された5月の雇用統計では、非農業雇用数や時間あたり賃金の伸びが予想を上回る強気のサプライズとなったことを無視するべきではない。

また6月14日に発表されたミシガン大学消費者態度指数も、景況感が予想以上に悪化する中にもかかわらず、5年後のインフレ見通しが3.0%から3.1%へと上昇、7カ月ぶりの高水準をつけている。

さらに7月3日に発表されたISM非製造業指数は48.8と、前月の53.8から予想以上に落ち込み、2020年5月以来の低水準を付けた。

だが、一方で価格指数は56.3と前月の58.1からは下がったものの、依然として節目となる50を大きく上回る水準を維持している。これは将来的に価格が上昇すると予想している企業が、下落すると見ている企業より多いということを意味しており、価格上昇圧力が依然として強いことの表れと受け止めておくべきだろう。

このように、企業の景況感指数でも価格指数は依然として高い水準にあり、市場のインフレ期待も簡単には後退しない可能性もある。やはり、冒頭のCPIなどの物価指数の内容だけに一喜一憂することなく、こうしたインフレに関するさまざまなデータに目を配らせ、総合的に判断する必要があるだろう。

FOMCでは、その方面の専門家がありとあらゆるデータを分析した結果や見通しに基づいて、金融政策を決定していることも忘れるべきではない。彼らがタカ派的な姿勢を維持しているのは、判断を間違っているのではなく、やはりそれなりの根拠があってのことなのだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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