息の詰まる職場・職場の閉塞感はどこからやってくるのか?(第4回)--ポスト団塊世代の閉塞感
社内には、山岡と同年代の社員はほとんど残っていない。多くは、90年代のリストラのときに会社を去っていった。そのときの様子について山岡に聞いてみた。
「正直、当時の経営陣の無能ぶりにはうんざりしていました。社内の雰囲気も最悪でしたね。でも、会社がどのくらい駄目になっていくのか見てみたい、という妙な好奇心もありました。それに、もう少し待てば割増退職金の条件が良くなるという噂もあったので、会社にもう少しとどまろうと思いました」
「同期で優秀な人間はほとんど辞めていったし、『自分が辞めることでこの会社に恩返しができれば』と言って辞めていった人もいます。残ったのは自分みたいに狡猾な人間だけですよ」
山岡は自嘲ぎみに口元を歪ませた。
「今の部署になってから、何度も異動希望を出していますが、後任の話は一切聞いていません。会社としては、自分で自分の転職先を見つけて早く辞めてほしいという思惑なのかもしれませんね」
「でも、自分の市場価値はちゃんと認識しているつもりです。最初は希望を持って転職活動を始めた人も、しだいに自分の市場価値を思い知らされて、最終的には業界も年収水準も大きくかけ離れた会社に転職していきます。私の仕事はこのマインドチェンジを後押しすることです」
「定年後もA社で働き続けるつもりです。当社の再雇用制度は、業界他社に比べるとかなり恵まれているほうです。公的給付(注:高年齢雇用継続基本給付金)をもらうことを考えると、60歳までの年収は高く維持しておきたいので、転職して年収が下がるのはもってのほかです」
山岡は今までになく能弁に語り始めた。