原発事故で困窮する福島県の企業、「このままでは力尽きる」--深刻な風評被害の実態
ホテルや旅館の場合、震災・原発事故による影響の表れ方は複雑だ。通常の宿泊客が激減する一方、原発事故で避難してきた住民や復旧作業に当たる職員の受け入れで稼働率を維持しているホテルもある。
ただ、ホテル・旅館が被った打撃は総じて大きい。614のホテルや旅館が加盟する福島県旅館ホテル生活衛生同業組合によれば、「4月後半時点での調べでは約68万人がキャンセルし、74億円の損害が発生した。5月のアンケート調査(約50%が回答)では、3月から来年2月までの売り上げ予測は前年同期比ほぼ半減、被害額は約360億円という数字が出た」(菅野豊理事長)。
菅野理事長が社長を務める磐梯熱海温泉(郡山市)の「ホテル華の湯」でも、震災・原発事故の直後からキャンセルが続出。4月初めには約300人いた従業員のうち正社員、パートを含めて144人を減らさざるをえなくなった。
4月からは富岡町と川内村の避難住民80人弱を受け入れたが、8月初めまでに全員が郡山市内の仮設住宅や借り上げ住宅に移動。その一方で一般の宿泊客が戻ってこない。
「昨年の8月10~20日ごろまではほぼ満室が続いたが、今年の稼働率はわずか3割。宿泊者のうち半数を、災害復旧作業に携わる全国からの警察官が占めている」(増子浩之営業支配人)。
会津若松市の東山温泉で「千代滝」「新滝」の二つの旅館を営むくつろぎ宿(深田智之社長)はやや様相が異なる。「8月中旬現在まで、売り上げは前年同期比1割減程度にとどまる」(深田社長)。というのも、原発付近の自宅から避難してきた大熊町の住民を、ピーク時に約500人、8月中旬現在でも190人強受け入れているためだ。ただ、8月下旬以降、先行きは厳しさを増すという。