大学の「学費値上げ論争」が空転する日本の大問題 これからの日本の国立大学が果たすべき役割は?
ドイツ、中国は、教育も研究も国公立大学が主体で、私立大学はビジネス実務教育などを補完する程度です。また、表には記載していませんが、ヨーロッパ諸国や発展途上国の多くは、③国公立大学が中心です。
このように、国公立大学と私立大学の役割分担は、国によってまちまちです。ただ、大まかには、発展途上国では官僚を育成するための国公立大学の役割が大きく、先進国では教育や研究のニーズが多様化し、私立大学の役割が相対的に大きくなると言えそうです。
国公立大学がベンチャービジネス育成に注力
では、今後わが国で、国公立大学はどういう役割を果たしていくべきでしょうか。
大学を教育の場とするなら、法念さんが主張する通り、国公立大学を中心に安い学費でより広い層に教育の機会を提供するべきかもしれません。ただ、大学を教育の場と限定するのは、世界のトレンドと乖離しています。
多くの国で大学は、「教育」だけでなく、「研究」で知識を生み出し、さらに知識を使って「ベンチャービジネスの育成」に貢献しています。
アメリカでは、スタンフォード大学があるシリコンバレーでITビジネスが発達し、ハーバード大学があるボストンでコンサルティング業が発達しました。大学が知識社会をリードする中心的存在になっています。
近年、東京大学はAI研究の松尾豊教授の研究室を中心にベンチャービジネスの育成に取り組んでおり、大学発ベンチャー企業の数で日本一です。2位京都大学、3位慶応義塾大学など有力大学がベンチャービジネス育成に注力しています(「トップ層の東大生が起業を選ぶようになった必然」参照)。
東大の藤井輝夫総長は、2022年の入学式で23分間の式辞のうち約15分、ベンチャービジネスについて語り、「東大関連ベンチャーの支援に向けた取り組みを積極的に進め、その数を700社にするという目標を掲げています」と明言しました。
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