大学の「学費値上げ論争」が空転する日本の大問題 これからの日本の国立大学が果たすべき役割は?
停滞を続ける日本において、画期的なベンチャービジネスが期待されることは、言うまでもありません。ただ、国公立大学がファンドを立ち上げて直接ベンチャービジネスを創造することには、懸念もあります。
国公立大学は、主に運営費交付金など国からの資金で運営されています。国からの金というと、天から降ってくるような印象を持ってしまいますが、元をただせばわれわれ国民の税金です。
一方、ベンチャービジネスはリスクが高く、100社立ち上げても大成功するのは数社、大半は失敗に終わると言われます。失敗したら、誰かが損失を負担しなければなりません。
日本に合った大学とビジネスの関わり方とは?
国公立大学がファンドを作って自らベンチャービジネスに挑戦し、「成功したら、成果はわれわれのもの。失敗したら、国(=国民)が尻拭いしてください」というのは、リスク負担と成果配分という点で国民の理解を得にくいのではないでしょうか。
もちろん、国公立大学がファンドを設立し、直接ベンチャービジネスに挑戦するというのが唯一のやり方ではありません。民間企業が挑戦し、それを国公立大学が「研究」や「教育」で支援・協力するというやり方もあります。日本では、むしろこちらのほうが長い歴史があり、一般的です。
個人的には、大学が民間企業を支援・協力するというやり方のほうが国民の納得を得やすいし、効果的だと思います。ただ、どういうやり方が適切かは、今後、じっくり検討するべきでしょう。
今回の学費値上げ騒動で残念に思うのは、ここまで書いたような大学の役割に関する議論に発展していないことです。
多くの学生・一般国民は、「値上げ反対!」「この物価高にまた値上げ?」ということで、学費のところで議論が止まっています。東大の藤井総長は、ようやく学生との対話を始めた程度で、主なお金の出し手である国民に大学の役割を説明する意向はなさそうです。
繰り返しますが、大学は国家の競争力の源泉。今後、大学のあり方を巡る国民的な議論が深まっていくことを期待しましょう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら