大学の「学費値上げ論争」が空転する日本の大問題 これからの日本の国立大学が果たすべき役割は?
法念さんは、大学教育を受けるのは国民の権利なので、義務教育と同じく国が授業料を負担するべきと主張します。一方、筆者は、国による負担とは、大学とは無関係な一般国民に広く税負担を求めることであり、受益者負担の観点から不適切である、受益者である学生・親が負担するべきだ、と考えます。
ということで、40分の討論は平行線で終わりましたが、個人的には、改めて「大学とはいったい何なのだろうか?」という問題意識が大いに深まりました。
世界の国公立大学と私立大学のバランスは?
今後の日本の大学のあり方について考える前に、世界の状況を確認しましょう。下の表は、主要国の国公立大学と私立大学の学生数の割合です。
(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
学生数で見るならば、各国の大学教育を担う国公立大学と私立大学のバランスは、以下の3タイプに分けることができます。
① 私立大学が中心:イギリス
② 国公立大学と私立大学がバランス:アメリカ、韓国、日本
③ 国公立大学が中心:ドイツ、中国
ここで特異なのが、イギリスです。大半のイギリスの大学は公的な支援を受けており、公立大学に分類されることもあります。ただ、運営の自由度は極めて高く、実質的には私立大学といえるでしょう(表ではUNESCOの分類に基づいています)。
アメリカ、韓国、日本は、国公立大学と私立大学がバランスしています。ただ、内実はかなり異なります。
アメリカは、学部の教育では州立大学が優勢ですが、大学院教育や研究、さらにベンチャービジネス育成では、ハーバード大・スタンフォード大・MITなど私立大学が重要な位置を占めています。
韓国は、教育では私立大学が主体ですが、国立のソウル大と私立の高麗大・延世大などが教育・研究で評価が高く、バランスの取れた役割分担になっています。
日本は、首都圏の教育では私立大学が重要な位置を占めていますが、地方の教育では国公立大学が優勢です。理科系の研究やベンチャービジネス育成は国公立大学が優勢ですが、人文社会系の研究では私立大学もかなり貢献しています。
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