日経平均株価は「下落圧力」に負けてしまうのか 移動平均線は下向き、「売り方有利」は本当か

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もちろん、筆者は過去形ではなく、まだ上昇途中であると考えるが、さすがに今はバブル段階に入っているとの意見も多くなっている。

この相場を生み出したのがFRBの大量資金供給による「カネ余り」であることは異論がないだろう。FRBが供給した資金は「FRBのバランスシート」として現れ、その額は8兆9000億ドル規模(約1400兆円)まで上昇した。今後、この資産が縮小するのも間違いなく、そうなれば株高の前提が崩れると考えることも当然である。

コロナ前にFRBは資産縮小に成功、日銀も「問題なし」

しかしバランスシートの縮小策は、直近では2017年に実施されこともある。それほど遠くないことなので覚えている投資家も多いと思うが、月100億ドル規模の縮小から500億ドル規模へと1年をかけて縮小額を増やし、その後は500億ドルを上限にしてバランスシートを縮小していくという策だった。

具体的に言うと、2017年10~12月には月100億ドルで合計300億ドル、2018年1~3月は月200億ドルで計600億ドル、4~6月は月300億ドルで計900億ドル、7~9月は月400億ドルで計1200億ドル、10~12月は500億ドルで計1500億ドルとなり、その後は毎月500億ドルの縮小をコロナショック前の2019年8月まで続けた。

結果的に、2017年9月のFRB資産4兆4700億ドルは、2019年8月に3兆7600億ドルまで7100億ドル(約15.89%)縮小した。しかし、この量的引き締め下のダウ平均は、2017年10月の月中平均約1万8000ドルが2019年初めには2万6000ドル近くまで上昇している。つまり「株高とFRBの資産縮小は並走できる」ということで、FRBの資産縮小が米国株相場の終わりを意味するものではない、ということだ。

もちろん、その後2020年のコロナ禍の進行でFRB資産はたった1週間で約6000億ドル増などという異次元の増殖を含め、2022年4月には8兆9654億ドルにまで膨張した。そのため、2018年とは資産縮小の規模が違うと言えるかもしれない。

しかし、すでに現在は7兆2000億ドル台と1兆7000億ドル(18.96%)の縮小をしており、その中で株式市場が史上最高値となっていることも事実だ。まだ資産縮小は続くが、今回もコロナショック前までのように「さじ加減」(償還と再投資のバランス)を間違えなければ、FRBの資産縮小と株高が並走することは可能と考える。

一方、日本では今、日銀の国債買い入れ額の縮小が最大の注目ポイントだ。だが、FRBの例を見ればわかるように、問題ないと考える。

今回は若干横道にそれたかもしれないが、前回の内容が「6月の攻防戦も7月にサマーラリーの形で決着するのではないか」という趣旨で終わっているとおり、今はその様子見の時間軸の中にある。よって、結論も前回同様、「7月後半から8月前半に発表される4~6月期決算の円安による上方修正に期待するサマーラリー待ち」ということになる。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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