KDDI社長「僕は商売人の子、マーケも詳しい」

明暗わかれた携帯各社、勝ち組auの秘密(下)

 ――田中社長は技術や端末に精通し、ユーザーから「田中プロ」などと呼ばれているが、実際はマーケティングを重視している社長ではないか?

マーケティングにむっちゃ詳しいの、知ってますか?僕は商売人の息子なんですよ。実家はいわゆる「よろずや」で、店先には女性向け商品などの薬局みたいなものから、おでんやコメ、野菜も肉もあった。今ではほとんど弁当屋になっているけど。店は朝6時に開いて夜11時に閉まる。休みも毎年1月1日しかない。だからサラリーマンに憧れていた。「商売人はつらい。技術屋ならいいんじゃないか」と。単純な考えだった(笑)

マーケティングはもともと好きだったし、趣味でずっと勉強していた。法人営業の担当のときには、お客さんのところによくいった。提案書もさんざん書いたし、個人向けの営業は経験がなかったが、高速通信のWiMAXを展開するグループ会社であるUQコミュニケーションズは、一から会社の立ち上げに携わった。社長だったので全部好きなようにできた。マーケティングの知見は外の世界もいろいろ経験して身に付けたものだ。

また新しい戦略について、外部とのコミュニケーションではあまり本質的なことは言わない。ファクトは話すが、すぐ真似されてしまうので。後から、そうだったのかとわかる感じかもしれない。

――他社とサービスや料金、端末などがまったく同じになったとき、ユーザーにauを選んでもらうためにはどうすればよいと考えているか?

究極はブランドだと思う。スマホではなくて会社を選ぶ、ということだ。じゃあどうするのか。ピースは色々ある。2012年にauのブランドロゴを筆記体に変えて、コンセプトを「あたらしい自由。」とした。このときにテレビCMを業界一番にしたかったが、組織がついてこなかったし、競争も厳しいタイミングだった。

最近は他社とのサービスの同質化が明らかになり、ブランド戦略に力を入れる必要がでてきたので、1月から新しいCMの「三太郎シリーズ」で再チャレンジした。僕は渉外、広報、宣伝、コミュニケーションの担当なので、宣伝部長に「一番じゃないとだめだ」と言って頻繁に議論してきた。結果、新しいCMは2014年度の好感度トップを獲得できたので、よくやったと思っている。 

 後継者は「いいなと思う人がいれば」

――社内の意識改革も進めてきた。社長就任時と比べて変わった点は。

社長就任後まだまもない時期の田中氏。社内の意識改革は「まだ道なかば」(2011年2月撮影:尾形文繁)

就任以降は、部長以上のポジションを2割ほど削減し、組織の乱立を減らした。できるだけ情報のシェアをして、共有サイトも作った。直接顔を合わせるコミュニケーションの機会も増やした。それでも道なかばで、決して良くなったとは思っていない。

大きな組織は価値観を共有しないとだめで、僕も業績やそのバックグラウンドについて1年で何回プレゼンするんだろうというほど説明する。経営方針を決める役員の合宿は年に3回。本部長クラスを集めた会議や、現場のリーダー以上の社員を集めた戦略会議も年1回やっている。もっと早くいろいろなことをやりたいが、垂直立ち上げに弱い会社なので一歩一歩やっている。どの経営者も同じだと思うが「こういう風に進めたい」と思っても、大きな会社はなかなかそうはいかない。

―田中体制も5年目を迎えている。後継候補は考えているか。

次の新しい人材がいいなと思ったらですかね。というか、言えるわけがないじゃないですか。ダイレクトな質問にはお答えしません(笑)

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