KDDI社長「僕は商売人の子、マーケも詳しい」 明暗わかれた携帯各社、勝ち組auの秘密(下)
――当初は現場の反発もあったと聞いている。
そもそも、固定とモバイルの営業が分離されていたので、両方を一緒に売ることが難しかった。そこで、互いに引き合いを受けたら連携できるように変えて、それがうまく機能した。店頭業務も関西地域などで成功事例を作り、それを全国に広げていった。やはり、誰か先に行く人がいなければだめだ。本部がどれだけ「このやり方が正しい」と言っても、現場にはなかなか伝わらない。
スマートバリューがうまくいったので、2013年4月に中期計画を作り、「今後3年間、毎年営業利益を10%成長させる」と約束した。株式市場も反応し、実際に利益もついてきて、だいぶよくなってきている。
ドコモができないことをやる
――スマートバリューの導入時、ドコモを意識していたのか。
バンドルプランは自社で固定回線を持つKDDIしかできない。(NTT東西とドコモは法規制上、独占的にセット割引をすることができない が)2015年に電気通信事業法の改正が予定されており、ドコモがセット割を始める可能性があることはわかっていた。それまで相手ができないことをやろうと考えていた。
――小野寺正・前社長(現会長)は固定回線でNTTに対抗していく考えがあった。だが昨年の総務省におけるNTTグループの規制緩和の議論の中で、田中社長は自社の固定事業について「買ってしまった」と言及し、前社長とは違う考えを持っているように感じた。固定についてどう考えてい るのか?
以前、総務省における議論の中で、NTTが保有する光ファイバーを、ほかの事業者に1回線ごとに貸し出すかどうかといった議論があった。これが実現できていたら、自社ではなくNTTに借りる形で固定事業を進めただろう。それが8回線(光ケーブル1本分)を一括で貸し出すことに決まったので、(借りるよりもコストが削減できると考え)東京電力の光ファイバー事業を買収した。固定には相当投資してきたし、時計の針は戻せないという意味で言ったものだが、固定回線は重要な武器だと思っている。
昨年の議論の中では、固定のインフラを独占でNTTに任せるのか、それは日本にとってよいことなのかという問題意識があった。結局、NTTが光回線の卸売りを始めたため、懸念していたとおりになってしまったのだが。
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