2021年の1~3月期から輸入価格が急騰した。これは、原材料価格など、企業の原価を引き上げた。企業はそれを売上げ価格の引上げに転嫁したのである。
どの程度の転嫁が行われたかは、GDPデフレーターーで確かめることができる。GDPデフレーターとは、GDPについての物価指数だ。GDPを構成する各支出項目についてデフレーターが算出され、それらの加重平均としてGDPデフレーターが算出される。
GDPの計算で、輸入は控除項目だ。つまり、他の項目が不変で輸入が増えれば、GDPは減少する。だから、輸入物価が高騰して他の価格が不変にとどまれば、GDPデフレーターは、輸入物価上昇率に輸入のウェートを掛けた分だけ低下する。
しかし、輸入物価の高騰分が国内物価に完全に転嫁されれば、輸入物価の上昇にウェートを掛けた値と国内物価の上昇にウェートを掛けた値とがバランスして、GDPデフレーターの上昇率はゼロになる。この場合、国内物価が上昇しているにもかかわらず、GDPデフレーターーの伸び率がゼロなる。
輸入物価の上昇は企業の売上価格に転嫁された
図表2を見ると、2021年から2022年中頃にかけて、そのような事態が生じていることがわかる。
それに対して、輸入価格上昇による原価上昇が不完全にしか国内物価に転嫁されない場合には、輸入物価上昇の影響が支配的になって、GDPデフレーターーの伸び率はマイナスになる。
実際には、図表2に示すように、輸入物価が上昇したにもかかわらず、GDPデフレーターはあまり変化していない。
これは、輸入物価が高騰したにもかかわらず、国内物価が影響を受けなかったことを意味するものではない。輸入物価の上昇は、企業の売上価格に転嫁されて、国内物価が高騰したのである。
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