以上で述べたように、企業は、原価の上昇分をほぼ完全に売上価格に転嫁したと考えられる。だから、企業の粗利益(売り上げ−原価)を減らすような影響は与えていないと考えられる。
しかし、原価の上昇が粗利益を増大させることにならないのは、明らかだ。では、なぜ粗利益は増大したのか?
粗利益増加のうち円安に起因するのは?
考えられる1つの要因は、輸出額も円安の影響で増えたことだ。輸出数量が変わらず、またドル建ての輸出価格が変わらなくても、円安になれば、円建ての輸出額は増える。これは、企業の売り上げを増やし、粗利益を増加させる重要なメカニズムだ。
では、粗利益増加のうちどれだけが、円安に起因する輸出額の増加によるものか。
法人企業統計では、売り上げのうち、どれだけが輸出であるかは示されていない。したがって、上の問いに対する答えは、法人企業統計調査のデータからはわからない。
そこで、国際収支統計で国全体の輸出額を見よう。そして、輸出は全て法人企業によって行われたと仮定しよう(実際には個人や個人企業による輸出もあると思われるが、大部分が法人企業だと仮定しても、大きな誤差はないだろう)。
実際のデータを見ると、2021年1〜3月期から2024年1〜3月期までの増加額は、次の通りだ。
粗利益が16兆961億円、輸出が5兆6895億円。
つまり、粗利益増加の3分の1程度は、輸出の増加によるものだ。
では、粗利益増加の残り3分の2の原因は何か。
1つの可能性として考えられるのは、2022年10~12月期から輸入デフレーターーが低下して、GDPデフレーターーが上昇したことだ。これは、図表2からも明らかに読み取れる。
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