無印良品の「冷凍食品」結局どれが売れているのか 「キンパ」だけじゃないこだわりの裏側

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バリエも豊富なミールキット(画像:無印良品サイトより)

なお、この商品は、発売時には一袋の容量が1人分に設定されていた。これは都市部での単身世帯比率の高まりを考えてのことだったという。ところが家族世帯からの要望に応えるかたちで、当初のコンセプトを捨て、昨年末に容量が2人分へと変更された。

同時に、袋の中身全体が見える透明のパッケージから、中身も確認できながら調理後のイメージが伝わるパッケージにリニューアルされた。

結果はすぐに数字に表れた。味は変えていないのに、販売個数は前年同期比で3.5~4倍に達しているという。この伸びは、無印の狙いどおり、冷凍食品を使うことに罪悪感を覚えるファミリー層も取り込めているからなのかもしれない。

家族の時間、ひとりの時間をもっと特別に

さて、ここまで無印の動向を見てきたが、ここから「冷凍食品の未来図」が見えてくる気もした。

今年4月に、日本冷凍食品協会が、昨年度の冷凍食品の利用状況について公表したが、人気アイテムのうどん、コロッケ、炒飯、ギョウザが不動のトップ4だったことが確認された。

一方、冷凍食品は以下のようなキーワードで分類されている。「食卓総菜」(主菜になる商品)、「個食化」「健康志向」「環境対応」の4つだ。

健康志向と環境対応の2つは、とくに目新しいキーワードではないが、あとの2つである「食卓総菜」と「個食化」はもちろん、各社の重要開発テーマとなっている。無印の場合は今回紹介してきたような、さまざまな消費者心理に寄り添う形で、差別化しようとしているように感じられた。

コロナ以前から二拠点生活を続けている筆者にとっても、冷凍食品はコロナ禍でぐっと身近な存在になった。たしかに無印の商品に限らず、ちょっとしたこだわりをうたった冷凍食品に対しては、少し高いなと感じる時もある。

一方で、高いだけのおいしさと幸福感を与えてくれるなら、ぜひ買いたいという気持ちにさせられる。これからの冷凍食品に求められる価値をひと言で表せば、「忙しい毎日に、ちょっとしたご褒美を」かもしれない。

無印が、既存の「安い」「手軽」がメインの冷凍食品の、さらに一歩先の市場を掘り起こせるかどうか。今後も興味深い展開を消費者に見せてくれるかもしれない。

竹下 大学 品種ナビゲーター

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たけした だいがく / Daigaku Takeshita

1965年東京都生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、キリンビールに入社。新規事業としてゼロから花の育種プログラムを立ち上げ、プロジェクト中止の決定を乗り越えて同社アグリバイオ事業随一の高収益ビジネスモデルを確立。2004年には、All-America Selectionsが北米の園芸産業発展に貢献した育種家に贈る「ブリーダーズカップ」の初代受賞者に、ただひとり選ばれる。技術士(農業部門)。著書に『植物はヒトを操る』(毎日新聞社、いとうせいこう共著)、『東京ディズニーリゾート植物ガイド』(講談社、監修)、『日本の品種はすごい うまい植物をめぐる物語』(中央公論新社)、『野菜と果物 すごい品種図鑑』(エクスナレッジ)等。

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