旭化成が「腎疾患薬1700億円買収」で見出す勝機 医薬品事業は大手不在のニッチ領域に絞り込む
上場子会社の住友ファーマが主力薬剤の特許切れにより、2023年度は売上高が前年度比で4割減。北米でのリストラ費用や減損の計上もあり、最終赤字は3150億円まで膨らんだ。同社の業績を取り込む住友化学も3118億円の最終赤字に転落した。
住友化学は住友ファーマに対して債務保証による金融支援を実施するほか、合理化支援など関与を強化する。再建を進めると同時に売却も視野に入れるが、売り先が見つからないのが現実だ。
三菱ケミカルグループも悩ましい状況にある。100%子会社の田辺三菱製薬は2024年度の最終利益が5割近い減益になる見通しだ。国内医療用医薬品の薬価改定、新製品の上市に向けた販管費や研究開発費の増加の影響が大きい。
三菱ケミカルグループの筑本学社長は「ファーマの(研究開発)資金をどう稼ぐか頭が痛い」と語る。業界紙の取材では「製薬の売却も選択肢」と示唆している。5月の決算会見では製薬の切り離しについて「決まったものはない」としながら「すべて検討中」と答えている。
「腎臓・免疫・移植」のニッチを攻める
他社が苦戦を強いられている背景には、医薬品事業の性質の変化がある。新薬の主流がバイオ医薬品へとシフトする中、化学と医薬のシナジーは少なくなっている。
一方、新薬を生み出す確率は低く、臨床試験を含む研究開発費は高騰の一途。運よくヒット薬剤を持てたとして、住友ファーマのように特許切れを迎えれば業績は急降下する。
そうした中、旭化成はニッチ領域に絞り込むことで勝機を見出す。具体的には「腎臓・免疫・移植」の領域だ。
2020年には腎臓移植手術患者向け免疫抑制剤を持つアメリカのベロキシス社を、デンマークの親会社ごと1432億円で買収した。さらにカリディタス社を加えることで、腎移植から腎疾患へとカバー領域が広がる。
SBI証券シニアアナリストの澤砥正美氏は、「医薬品大手が参入しにくい専門治療領域でポジションを確立する。(薬剤を)持っていく病院も同じなので効率がいい。合理的な戦略だ」と評価する。
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