日本が今の円安を懸念する必要はまったくない 日銀の植田総裁が利上げを急ぐ可能性は低い

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ただ、そもそも、為替変動に直面して、金融政策の判断が大きく左右されるのは妥当とは言い難い。過去を振り返ると、1985年のプラザ合意後の円高、1998年半ばまでの日本の銀行問題への懸念を背景とした円安など、為替市場が大きく動く場面は複数回あった。

だが、これらの為替変動に対して、当局による金融政策や為替介入が成功したとは言えない。というのも、変動相場制のもとで為替レートをターゲットにして強引に制御しようとして対応しても、機能しないからである。

植田総裁が円安容認姿勢を変える可能性は低い

仮に、最近の円安を理由に日銀が引き締め政策を強めれば、経済活動やインフレを不安定化させるだろう、と筆者は考えている。もちろん、植田和男総裁をはじめ、日銀はこの弊害を理解しているとみられる。もし、1ドル=160円を超えて投機的に円安が進むといったことなどがなければ、日銀が夏場にかけて金融引き締めを強化する可能性は低いだろう。

2023年4月に就任した植田総裁は、黒田東彦前総裁の政策姿勢のかなりの部分を引き継いだと筆者は位置付けている。「アベノミクスの継続」である拡張的なマクロ安定化政策へのこだわりが、最近までの円安の長期化をもたらしている。円安がインフレ期待を高めて2%インフレの定着を後押ししている。こうした意味で、もし植田総裁が円安容認姿勢を変えるならば、黒田路線からの転換を意味するだろう。

実際には、植田総裁がこうした政策転換を年内に踏み出す可能性は低いだろう。日銀が再利上げに踏み出すとすれば、物価と賃金の好循環が強まっていることを見定めてからでも遅くはないからである。

また、先述のとおり、日本の10年物国債金利は一時1.1%台にまで上昇したが、筆者は、このことは経済実態に応じた金利上昇だと位置付けている。中立金利を意識して利上げしていくという日銀の考えは明確であり、その意味で避けられない金利上昇であり、緩やかな金利上昇であれば経済成長にブレーキをかける可能性は低いとみられる。

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