KDDI社長「au経済圏広げる」ための新戦略 明暗わかれた携帯各社、勝ち組auの秘密(上)

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また(ユーザーが利用に応じて獲得した)ポイントは、これまでアクセサリー商品の購入や機種変更などにしか使えなかった。これを、どこでも利用できる仕組みにリニューアルした。物販サービスも、それに合わせて立ち上げているところだ。

社内では、ウォレットカードのユーザー数を増やし、1契約当たりの収入もさらに伸ばそうと言っている。通信だけではなく、オンライン、オフラインで市場を広げる。ユーザーが便利になるように経済圏を育てる、というコンセプトだ。

――独自コンテンツサービスの「スマートパス」でも、リアル店舗などへの送客に注力していた。

会員向けクーポンをやっている。たとえば映画館に送客する「auマンデイ」。毎週月曜日に映画が1100円で安く見られるので、ユーザーは映画館に足を運ぶ。そうすると提携先も喜んで原資を提供してくれるし、彼らがauショップ向けにクーポンを出すことで相互に送客できる。auの顧客ベースが通信以外の分野のパートナーにメリットを与えることができる。ならば、パートナーとともに経済圏を作っていこうという戦略だ。

実は、「スマートバリュー」(固定回線やケーブルテレビと、スマホのセット割引)も同じだ。われわれがケーブルテレビに送客し、彼らがauのスマホが欲しいユーザーを送客してくれる。ネットワークや通信だけでなく、そのほかの分野でもこうした取り組みを始めたというわけだ。 

auユーザーでなくても接点は持てる

――経済圏を広げることで、業績にどんなインパクトがあるのか?

たなか・たかし●1957年生まれ。2007年に取締役執行役員常務、10年6月に代表取締役執行役員専務を経て、同年12月から現職(撮影:梅谷秀司)

短期的には決済手数料収入が上がっていく。ただ、それだけでは料率が低いので、いくつかのサービスを自社でやる。物販なら粗利を取り込むことができる。現在、個人契約数は約3700万で日本の人口の4分の1の規模がある。ユーザーの消費のうち、一定の割合がau経済圏に入るだろう。

また、auユーザー以外との接点を作るために、「シンドット アライアンス」(ウェブサービス間で互いに送客し合うプラットフォーム。KDDIと関係の深い企業を中心に約20のサービスが参加)の取り組みも進めている。

各サービスには、相互に送客するための共通メニュー画面があり、広告枠もある。まずはその閲覧数に比例した広告収入が入る。それだけではつまらないので、プラスアルファでそれぞれのサービスが抱えるユーザーに商品を販売するなどして収入を上げていく。ここではau以外のユーザーにもアプローチできる。これまでは外部のユーザーにアプローチするには他社から獲得するしかなかったが、いまは携帯市場が縮小しているので、別の方法でやっているわけだ。

次ページM&Aには今後も注力
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