物流TOB合戦、佐川の「異次元の高値買収」で決着へ 株式市場は厳しい評価、問われる巨額買収の果実

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綾社長は同日開かれた会見で「SGHDの提案がもっとも高額で優れていると考えるようになった。営業体制や顧客基盤の活用、低温物流の効率化、国際物流の強化、メディカル分野の拡大。物流2024年問題への対応にも寄与する。主要顧客が離反する可能性も低い」とシナジーを強調した。

一方、SGHD側からすると、まさに異次元の高値づかみにみえる。丸和HDの買い付け価格1株3000円からは実に91%も高い。今期計画の1株利益から計算すると、PER(株価収益率)は49倍にもなる。前述のように、もともとのC&Fの株価水準はさらに低いのだ。

物流事業におけるシナジーについて、SGHDの松本秀一社長は「われわれは佐川急便を中心としたラストワンマイルに強みがある。C&Fは上流から中流の、われわれが手掛けていないところをやっており、掛け合わせることで一気通貫の物流ができる。どのようなシナジーを出せるか、さまざまに検討している」と説明した。

宅配便以外を広げるSGHD

SGHDは2030年度に向けて、宅配便以外の事業を広げる構想を持つ。今回のTOBはその一手でもある。とはいえ、C&Fの前2024年3月期の営業利益は47億円、当期純利益は32億円と利益貢献は小さい。いかに佐川急便から送客し、効率化などを進めても、1237億円の買収額に見合ったシナジーを出せるのかは疑問符が付く。

ここには、SGHDとしてマーケットの評価と異なる考え方があったとみられる。

低温物流にはつねに温度管理を行うための専用設備が必要だ。そのため、C&Fは全国各地に自前の物流センターを持っている(2023年3月末時点の土地の簿価は約170億円)。また、同社は業界では珍しく自社ドライバーを多く抱える。2024年3月時点でドライバーは4103人。トラックも2872台を数える。

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