チョコザップの成否も握る「RIZAP株続落」の真因 経営陣の株式市場との向き合い方には難あり

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株を売却する瀬戸社長はインサイダー取引規制に抵触しないようにしておく必要があった。そのためライザップは、分売発表前に新サービスの公表などを半ば駆け込みで行った。

それらは総じてチョコザップへの期待を高め、ライザップ株の上昇につながった。それが一転、分売の発表となり、投資家に冷や水を浴びせる格好となった。

一連の過程を追うと、瀬戸社長を筆頭とする今のライザップ経営陣に欠けているものが見えてくる。市場とうまく対話する力と、それができる人材だ。チョコザップの大量出店費用を賄うためには備えておきたいものだった。

瀬戸社長が選ぶ「次の手札」は

これまでチョコザップの出店費用は借り入れを中心に手当てしてきた。借入先は銀行だけにとどまらず、ライザップが傘下に持つ子会社にも広がっている。

さらに瀬戸社長が昨年8月以降2度に分けて、自身の資産管理会社から計100億円を劣後ローンでライザップに融資した。この100億円は瀬戸社長のまさに「虎の子」の資金だった。

「過去の分売で得たお金をそれこそ1円も使っていなかった。こういうときのために大事に取っておいた。それを今回目一杯出した」(瀬戸社長)

このように手札を切ったうえで行った分売だったが、もくろみを大幅に下回った。今後のチョコザップの出店計画に影響を与えないとするが、資本増強額が想定を下回ったのはやはり痛い。

ライザップは、チョコザップの既存店から得る収入で新規の出店費を補う青写真を描く。ただ、早期にそこまでたどり着けるのかは予断を許さない。次の手札を用意しておく必要はあるだろう。

今後、投資家からの信頼を取り戻し、市場から資金を調達できるのか。はたまた瀬戸社長は、今まで避けてきた外部資本の受け入れも検討するのか。ライザップは大きな岐路を迎えているのかもしれない。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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