パスコ超熟「60ミリの子ネズミ混入」対応の成否 誠実ゆえに、消費者に過度の想像をさせた

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誠実すぎたゆえに、逆効果になりかねない今回の事案だが、ではどうすれば回避できたのだろう。例えば、「クマネズミの子ども」ではなく「げっ歯類の一種」といった表現であれば、まだ想像をかき立てずに済んだのではないか。

クマネズミ
クマネズミ(写真:crossfade/PIXTA)

今回、SNS上では「クマネズミを画像検索した」との反応も見られた。調べやすくなったからこそ、より嫌悪感が増した消費者も少なくないだろう。先ほどの「記憶の想起」と通底する話だが、発表文や各社報道によると、異物の正体は5月8日時点でわかっていたのだから、その時点で伝えていれば、リカバリーも早かったと思われる。

「60ミリ」より「6センチ」表記のほうが良かった?

また「60ミリ」は「6センチ」に書き換えるだけでも、ちょっと小さめな印象を覚えないだろうか。よく冗談話で引き合いに出されるが、栄養ドリンクに含まれる「1000ミリグラム」の栄養素は、わずか「1グラム」にすぎないが、大量に配合されているように感じてしまう。その反対のパターンだ。

これまで見てきたように、企業が不祥事対応する際には、そのタイミングと表現も、しっかり見極めたうえで対応する必要がある。誠実であるに越したことはないが、「受け手がどう考えるか」と、一瞬立ち止まって思いをめぐらせることも重要なのだろう。

時には「社内や業界内、関係官庁向けの発表文」と「一般消費者向けの発表文」を出し分けるのも効果的かもしれない。今後に向けて、もっとも大切なのは、愛用している消費者に「食べても安心だ」と感じさせること。その観点から考えると、過度な不安を招いた消費者に対しては、より気持ちを解きほぐすような追加対応が必要なのかもしれない。

城戸 譲 ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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きど・ゆずる / Yuzuru Kido

1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ジェイ・キャストへ新卒入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長などを経て、2022年秋に独立。現在は東洋経済オンラインのほか、ねとらぼ、ダイヤモンド・オンライン等でコラム、取材記事を執筆。炎上ウォッチャーとして「週刊プレイボーイ」や「週刊SPA!」でコメント。その他、ABEMA「ABEMA Prime」「ABEMA的ニュースショー」などネット番組、TOKYO FM/JFN「ONE MORNING」水曜レギュラー(2019.5-2020.3)、bayfm「POWER BAY MORNING」などラジオ番組にも出演。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
X(旧ツイッター):@zurukid
公式サイト:https://zuru.org/

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