パスコ超熟「60ミリの子ネズミ混入」対応の成否 誠実ゆえに、消費者に過度の想像をさせた

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まずは「薄れかけていた記憶を想起させてしまった」ことだ。食品への生物混入は、それだけでインパクトが大きい。しかも、食べる機会が多い、人気の食パンでの事案とあって、「もしかして自分も買っていたかも」と気になる消費者は多いはずだ。

不祥事に限らず、あらゆる話題は、日を追うごとに薄れる。しかし、初報から2週間という「忘れはじめたころ」に続報が伝えられたことで、最初の印象が、ふたたび色濃く浮かんできたのではないか。まだ初報の記憶があざやかなうちに、経緯と再発防止策を発表していれば、そのぶんネガティブイメージからの回復も早くなるのではと思える。

もうひとつの可能性は、「詳細な描写により、より具体的にイメージしやすくなった」ことだ。たしかに初報の「小動物らしきものの一部」と、続報の「クマネズミの子ども(約60mm)」では、より詳細に伝えられているだけに、後者のほうがグロテスクに感じられる。

十分すぎる対応

とはいえ、ここまで「続報が抱える問題点」について書いてきたものの、企業広報の「炎上」対応を幾多と見てきた筆者からすれば、大手企業の異物混入対応としては、十分すぎるのではないかと感じる。一時的にはいい印象を残さなくても、長期的に見ればブランドイメージの維持・強化につなげられるだろうと考えるのだ。

不祥事対応をめぐっては、経緯説明も再発防止策も不十分なうえ、取材対応にも応じず、はたから見れば「うやむやにしたいのでは」と感じさせる企業も珍しくない。しかし今や、それで逃げ切れる時代ではない。SNS上には「誠実に向き合わなかった事実」が残り、ことあるごとに再燃される。

広報対応が不十分だと、その背景にある企業体質に、根本的な問題があると見なされる。ひとたび「スピード感がない」とか、「不都合な事実は隠す」といった印象を残してしまえば、それだけ尾を引いてしまうものだ。

その点、敷島製パンの発表には、誠意が感じられる。そもそも、食品メーカーにとって、異物混入による不祥事は、命取りになりかねない。とくに今回のように「生物混入」となれば、より消費者の忌避感は増す。

かつて、とあるカップ麺にゴキブリの混入事案が発生し、その後の広報対応をめぐり「大炎上」が起きた。当該企業は販売休止後、製造ラインを一新して衛生面を確保したうえ、ブランディング面でも「チャレンジングな期間限定商品」を立て続けに出すことで、これまでになかった話題性を集めているが、騒動から約10年を経てもなお、完全にネガティブイメージを払拭するまでには至っていない。

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