「カルチャー帝国」築く高級ブランドのしたたかさ ルイ・ヴィトンの「衝撃人事」が示す異変とは?

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ケリングは傘下にグッチ、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ボッテガ・ヴェネタなど高級ファッションブランドを持つが、その中の1つ、サンローランが独自の映画プロダクションを設立した。ファッションブランドが本格的な映画制作を行うのは初めてのこと。

このようにファッションブランドは今、アート、テクノロジー、ポップカルチャー、エンターテインメント、メディアと融合し、世界のあり方に大きな影響を及ぼす文化的ブランドを目指し、成長を続けている。

「文化」を飲み込み、生み出す巨大資本

巨大資本が創出するそのような文化に抵抗するファッションブランドも少なくない。

イタリアのカジュアルブランド、ディーゼルは世界初となるコミュニティーハブ「ディーゼル・スタジオ」を東京・銀座に期間限定で作り、東京のローカルなカルチャーを発信。

また、2024年秋冬ショーでは会場の巨大モニターに、1000人のディーゼルファンを映し出した。各自の個性を生かしたコーディネートを披露する光景は反響を呼んだ。ローカルで多様な個性の集積がディーゼルのコミュニティーを創り、ブランド独自の文化を築くことを目指している。

ディーゼル2024年秋冬ショーの様子
ディーゼル2024年秋冬ショーではランウェイでは背景の巨大モニターに抽選で選ばれた1000人のディーゼルファンが映る。各自の個性を生かすコーディネートの過程を披露(写真:Victor Boyko / Getty Images)

もともとファッションはカルチャーと不可分であったとはいえ、現在、ファッションを生み出すプレイヤー側の文化的な影響力は、資本の力を得てますます大きくなっている。こうした力が、私たちの価値観にどのような影響を与えているのかを自覚しておきたい。

そのうえで、私たちはどうありたいのか、どんなコミュニティーを創り、どのような文化を育てていきたいのかを、今こそ「静かに」考えたい。

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中野 香織 服飾史家

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なかの かおり / Kaori Nakano

イギリス文化、ファッション史、ダンディズム史、ラグジュアリー領域を専門とする独立研究者。日本経済新聞など数媒体で連載を持つほか、企業のアドバイザーを務める。著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)、『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』(吉川弘文館)、『モードとエロスと資本』(集英社新書)、共著に『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義』(クロスメディア・パブリッシング)ほか多数。東京大学大学院修了。英ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学特任教授などを務めた。

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