商社勤務でも苦しい…23区「億ション」だらけの訳 高騰続くマンション価格が"適正"なカラクリ

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そう遠くない昔に800円だったラーメンが2000円に値上がりするということは物価が2.5倍になっているというわけです。日本人の感覚としては非常に正しいのですが、実はこの2.5倍のインフレというのは日本人の錯覚です。

実際に起きていることは昔一杯10ドルだったラーメンが14ドルに値上がりしているのです。それが十数年前の1ドル=80円の時代には800円で食べることができたのに、最近、1ドル=150円の時代になると2000円もかかるというわけです。アメリカ人の感覚だと10数年で物価は1.4倍にしか上がっていないのに、為替レートのせいで日本人はアメリカの物価が2.5倍に上がっているように錯覚するわけです。

そしてアメリカ人から見るとこの逆の錯覚が起きています。日本は長期のデフレのせいで十数年前は1000円だったラーメンが今でも一杯1100円で食べられます。ところがアメリカ人から見れば十数年前に13ドルだったラーメンが7ドルと激安で食べられるように見える。だからインバウンドの外国人は日本に来て「安い、安い」と狂喜乱舞するのです。

日本のマンションが安く見えるワケ

この錯覚効果は、先ほどの円建てとドル建てのマンション価格のグラフに日米それぞれのGDPデフレーターでインフレ要素を加えることで可視化できます。日本人は15年前から今日まで物価は1.07倍にしか上がっていませんが、アメリカ人は15年で物価は1.41倍も上がっています。

ですからアメリカ人がアメリカ国内と同じように海外でもドル建て感覚で錯覚すると、日本の物価は異様に安くなっているように見えてしまうのです。

実際にアメリカ人から見た東京23区内の新築マンション価格は2024年の82万ドルは別に最高値でも何でもありません。アメリカのインフレによる錯覚効果を加味すれば2021年の87万ドルのほうが高かったし、過去最高だった2011年の92万ドルと比べればいまはむしろ値下がりしているように錯覚するのです。

このように23区内でも希少性のある(だから供給が少ない)再開発のタワーマンションが、土地価格のバブルではなく建築資材など意味のあるインフレで高くなっただけで、しかもそれが外国人投資家から見てそれほど高くは見えないという状況であれば、今の東京のマンション価格は別に天井だとか、不合理に高い価格だとは言えないのです。

とはいえバブル経済のさなかに、同じような経済評論家の「不動産価格はこれからもっと上がるよ」という話を真に受けた方は、私のこの分析についても気を付けたほうがいいかもしれません。新築マンションを買うのは一生一度の投資ですから、できれば住宅ローンは年収の7倍以内にされることをお勧めします。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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