厳戒態勢で発表された「新型フェラーリ」の啓示 車名をズバリ「12チリンドリ=12気筒」とした訳

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ロングノーズが際立つスタイリングはたしかに365GTB/4を思わせる(写真:Ferrari)
ロングノーズが際立つスタイリングは365GTB/4を思わせる(写真:Ferrari)

「1950年代から1960年代にかけてフェラーリが送り出してきたGTにインスピレーションを受けたデザイン」とは、ヘッド・オブ・デザインのフラビオ・マンツォーニ氏が発表会で行ったスピーチの中の一節だ。

もちろん、デザインは往年の雰囲気を感じさせるかもしれないが、性能はさらに先へ進んでいる。

65度のバンク角をもつ6.5リッターV型12気筒エンジンは、基本的に812スーパーファストと同じものだが、新設計のバルブトレインで燃焼効率を上げるとともに、チタニウム製コンロッドやアルミニウム合金製ピストンなどで慣性質量の低減と軽量化を実現。

この時代にあってハイブリッドなどの電動化は行われていないことが最大の特徴(写真:Ferrari)
この時代にあってハイブリッドなどの電動化が行われていないことが最大の特徴(写真:Ferrari)

「最高回転数は驚異の9500rpmに引き上げられました。最大トルクの80%をわずか2500rpmから発生します。その結果、最高のスロットルレスポンスと、レッドゾーンまでパワーが無尽蔵に湧き上がる感覚が実現しました」という意味のことがプレスリリースでうたわれている。

最高出力は、812スーパーファストの588kW(800ps)から610kW(830ps)に上がっている。静止から時速100kmへの加速性能(0-100km/h加速)も、3.0秒から2.9秒へとアップした。

後輪左右が別々に「バーチャル・ショートホイールベース」

スペック上の特徴は、ホイールベースを812スーパーファストより20mm短くしたこと。目的は「回頭性を向上させコーナリングスピードを上げるため」だと、発表会場でエンジニアリングのトップであるジャンマリア・フルゼンツィ氏は説明した。

オープンルーフのスパイダーもラインナップされる(写真:Ferrari)
オープンルーフのスパイダーもラインナップされる(写真:Ferrari)

さらに、12チリンドリには、左右の後輪が別々の角度で動く後輪操舵システムも搭載。「バーチャル・ショートホイールベース」を採用した812スーパーファストの場合は同じ角度で操舵されるので、これは同様のシステムを採用した812コンペティツィオーネゆずりといえる。

「たとえば、コーナリング時は外側のタイヤを積極的に操舵します。すると、ホイールベースが(812スーパーファストより)50mm短くなったのと、同じ効果が得られるのです。一方、高速走行時は、ロングホイールベースと同様の安定性が得られます」

フルゼンツィ氏による説明だ。もうひとつユニークなのは、リアスポイラーのデザインである。

リヤウインドウからディフューザーに向けて走るラインに注目(写真:Ferrari)
リアウインドウからディフューザーに向けて走るラインに注目(写真:Ferrari)

「機能とフォルムの折り合いをつけるのが、開発チームのもっとも大事な仕事です」とフルゼンツィ氏は前置きしたうえで、12チリンドリの電動リアスポイラーは、左右に分かれたセパレート型であることを紹介する。

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