10両が主力の首都圏私鉄に「短い編成」が残る事情 「ホームの長さが足りない」以外にも理由はある

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自社線の設備でなく「乗り入れ先の路線」が理由の例もある。例えば相模鉄道。相鉄線内用の車両は一部(10000系5編成)を除き10両編成で、JR直通列車も10両だ。だが、相鉄・東急新横浜線を経由して東急線方面への乗り入れ用に導入した車両は、東横線方面に直通する20000系が10両編成なのに対し、外観は同じでも目黒線方面に直通する21000系は8両編成である。これは目黒線や東京メトロ南北線、都営三田線が8両までしか対応していないためだ。

相鉄 20000系
相鉄の東急線直通車両20000系は東横線方面乗り入れ用の10両編成。同じ外観でも目黒線方面用の21000系は乗り入れ先に合わせて8両編成だ(撮影:尾形文繁)

東武スカイツリーラインは10両・8両・7両・6両編成が走るが、東京メトロ日比谷線直通列車は7両編成、半蔵門線直通列車は10両編成だ。一方で、東武スカイツリーラインのターミナルである浅草駅のホームは8両編成が入れるのは1つだけで、ほかは6両までの対応だ。自社線内を走る区間急行や区間準急は6両編成または8両編成、普通列車は主に6両編成という形になっている。

東武70000
東武の東京メトロ日比谷線乗り入れ車両は7両編成だ(撮影:尾形文繁)

東武の浅草駅は堂々たる建築であるものの、特急と近距離の普通列車が発着する比較的小規模なターミナルで、通勤輸送の主力である10両編成は半蔵門線に乗り入れて都心に直通する。長編成の列車が入れるかどうかはターミナルの性格も左右するといえる。

車体の短い京急・京成は?

ここまで挙げた関東の大手私鉄は1両の長さが20mの車両を使用しているのに対し、京成電鉄と京急電鉄はやや短い18m車両を使用している。

京急は私鉄最長の12両を運転しているが、京成は最長でも8両編成で、車両のサイズを考えれば関東大手私鉄の主要路線中ではもっとも短い。さらに6両編成もある。京成によると、これは一部の駅で8両編成の停車に対応できないためだ。京成中山と海神が対応していないため、普通列車は6両で運転する。宗吾参道―芝山千代田間の区間列車では4両編成も見られる。

京成3700 6連各停
6両編成の京成線普通列車(写真:tarousite/PIXTA)

ホームが短いことが廃止につながったケースもある。京成上野―日暮里間の地下区間に位置し、現在は東京都選定歴史的建造物になっている博物館動物園駅(2004年廃止)はホームが4両までしか対応していないという事情も廃止理由の1つとなったのを思い浮かべる人も多いだろう。

10両などの長編成が走る一方、短い編成の列車も走る(残る)路線には、それぞれに固有の事情があるのだ。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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