今の時期はご用心「カラス襲撃」から身を守る方法 人を襲う理由や習性について鳥類学者が解説

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カラスが引き起こす害には、送電線の上に巣をつくることで起きる停電や、農作物の食い荒らし、空港付近での航空機との衝突もある。近年では、鳥インフルエンザのウイルスをカラスが運んでいるのかもしれないと疑われたこともあった。

こうした害を減らすため駆除は行われてきたが、「カラスだって生き物ですから、大人のカラスにしてもヒナにしても、無残に殺されるのは問題。カラスの巣があったら短絡的に落としてしまおうとするのではなく、せめてまだ卵もヒナもいない段階で対処してほしい」と樋口さん。

カラスはこんなに頭がいい

樋口さんにカラスの魅力を教えてもらうと、カラスは鳥の中で記憶力、洞察力、学習能力が抜群に優れているという。

樋口さんが観察してきたカラスの中には、公園の水飲み場の蛇口の栓をくちばしで回し、水の量を調節して水を飲んだり浴びたりするカラスや、道路にクルミを置いて、車にひかせて割らせるカラスが確認されている。クルミを道路に置くこと自体驚きだが、確実に車にひかせるため、赤信号で止まっている車のタイヤの前にわざわざクルミを置くこともあるという。

「この場合は100%、クルミは割れますね(笑)。水飲み場の蛇口の例もそうですが、カラスは人間生活の中に積極的に入っていき、人がやっていることを見て覚える。人間が作り出した機械文明を大いに利用しながらたくましく生きている生き物です」

それにしても、かつては「夕焼け小焼け」や「七つの子」などの童謡に登場し、親しまれていたはずのカラスに、いつから悪役のイメージがついたのだろう。

「それはやっぱり都市で人が生ゴミをたくさん出したことでカラスの数が増え、ゴミを食い散らかしたり人に危害を加えたりすることが頻発してから。だから人間がもう少しまともな生活をし、ゴミの処理などをきちんとすれば悪者のイメージはつかなかった。責任はかなり人間にあると思うんですよ」(樋口さん)

筆者はカラスに頭を蹴られて以来、現場付近では日傘を差すようにしてきたので、新たな被害には遭っていないが、最近はカラスがガードレールにとまっていることが多くなったと感じている。

つばさを閉じていてもかなり大きいカラスのすぐ横を通り過ぎるのは怖いものだ。でも、樋口さんによれば、「カラスが下から襲ってくることはないので、そのまま通り過ぎて大丈夫。でも、目は合わさないほうがいいでしょう」。

カラスが襲ってくるのは理由があってのことで、決して悪気がないこともわかった。それでも日傘を差したり、変に驚かせたりしないようにして、こちらは用心を怠らないようにしようと思う。

参照:『ニュースなカラス、観察奮闘記』樋口広芳著、文一総合出版

井上 志津 ライター

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いのうえ しづ / Shizu Inoue

東京都生まれ。国際基督教大卒。1992年から2020年まで毎日新聞記者。現在、夕刊フジ、週刊エコノミストなどに執筆。福祉送迎バスの添乗員も務める。WOWOWシナリオ大賞優秀賞受賞。著書に『仕事もしたい 赤ちゃんもほしい 新聞記者の出産と育児の日記』(草思社)。

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