ラーメン屋経営で地獄見たプロレスラーの気づき 川田利明が向き合う「お客様は神様です」の怖さ

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そんなエンターテインメントにおける演者と観客の関係性を指す言葉が、いつのまにか「お客様は神様のような存在だから、誰よりも偉い」と拡大解釈されるようになり、飲食業界でも当たり前のように使われるようになってしまった。

たしかにお客様は神様だ。それは間違いない。

お客さんが来てくださらなかったら、店は存続できないし、本当に大事でありがたい存在で、これはもう当たり前すぎる話だ。

それを我々、店側の人間が言うんだったらわかる。でも、「俺は客だぞ、神様だぞ。俺の言うことを聞け!」とお客さんから言われてしまうと、それはどうなんだろうか、となってしまう。

でも行きすぎた「おもてなし」精神が浸透した今、そういう人が増えているので、それはもう受け止めなくてはいけない。

「客のミス」によるロスが大きな痛手に

以前、「ランチタイムにラーメンを食べた方はカレーライス無料」というサービスを始めたら「無料のカレーだけくれ!」という人がたくさんやって来たことがあるけど、こんなのはほんの一例。とにかく、サラリーマン生活とは違って、常識的な受け応えだけしていればいい、というわけではなくなる。

自分が客としてラーメン屋に通っていた時のことを思い返してみてもそうだが、無意識のうちに「客のほうが偉い」という言動を取っているケースを見かけないかな。

たとえばあるお客さんがビールを飲んでいる時、つい手をすべらせて、コップをひっくり返してしまったとする。

店側には過失はないとしても、基本的に店員は「気にしないでいいですよ」どころか、「大丈夫ですか?」と心配するように声をかけ、代わりのビールまで提供する。テーブルからコップが落ちて割れてしまっても、まったくの不問だ。

実は割り箸は高いんだけど、こぼしたビールで割り箸がびしょびしょになってしまったら、もう使いものにならないから、泣く泣く廃棄処分にするしかない。

細かい話だけど、爪楊枝だって同じだよね。こういう状態になったら、すべて店側が負担するのが、暗黙の了解になっている。

俺が客として飲食店に通っていた時にこういう状況に陥ってしまったら、「すみませんね」とは口にしていたけれども、あとは店員に言われるままにしていた。

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