原発事故の賠償指針で被災地に広がる不安、「線引き」が決める原発賠償の”格差”


 今後議論が本格化する風評被害はさらに困難を極めると見られる。

福島第一原発から約100キロメートル離れた会津若松市では、事故の影響で観光の客足がピタリと止まった。会津若松旅館ホテル組合長で、ホテル大阪屋の福西正弘社長によると、「7月までの県外からの修学旅行は前年比で95%減り、県内からの遠足も大幅に減っている」。ホテル大阪屋では事故以降、大熊町の避難者を受け入れて稼働率を保ってきたものの、7月半ばには大半が仮設住宅に移動。本来なら夏場が書き入れ時だが、先がまったく見えない状態だ。福西社長は「この状態が夏だけなのか、来年まで続くのか検討もつかない。本当に大変なのはこれからなのに」と吐露する。

これまでに示された指針では、「現実的に生じた買い控えなどによる被害」を賠償するとしている。ただ過去に生じたキャンセルはともかく、今後の影響をどのように算定するのかは、はっきりしていない。

会津若松では観光客の減少の影響が土産物屋からコンビニエンスストアにまで波及。「商店街の中には閉店した店もある」(福西社長)。風評被害は観光業や県内にとどまらず、その範囲は甚大。たとえば、観光業にようにどこまでが地震で、どこまでが風評による買い控えなのか、線引きが難しい業態もある。

さらに、中小事業者にとって悩ましいのは、仮払いでは福島県商工会連合会など県内の3経済団体が東電との窓口を務めたが、本賠償では個々の事業者が直接東電に被害申請をしなければいけない点だ。「日本弁護士連合会が調停にあたるという話もあるが、われわれもかなり勉強しないといけない」と、浪江町商工会の原田雄一副会長は話す。仮に合意に至らなかった場合、訴訟というケースも考えられるが、「個別は難しいので集団訴訟という形になるだろうが、それも労力がいるし大変」(浪江街商工会の神長倉氏)なのが実情だ。

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