アベノミクスのブレーン「今利上げする理由ない」 為替を理由にした利上げは国際ルール違反
アベノミクス仕掛け人の見方
本田悦朗氏(元内閣官房参与):私の見解は、前回の日銀の政策決定会合、つまりマイナス金利政策の解除、それから、YCCというイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)、つまり、一番期間の短い金利と十年物の国債の金利の両方を抑えて、その間をつなぐイールドカーブ、利回り曲線をスムーズにしていこうと。そういうやり方をやってきたが、それを全て廃止した。
全部一挙に廃止するには、私はまだ日本の足腰が弱いんではないかなと思っていて、春闘の結果、それから、6月の定額減税、その他の様子をよく見てから、それから、来年どうなりそうか、ということを確認してからでも遅くはないと思っていたが、植田総裁がそう(=マイナス金利政策の解除)決断したので、これを前提に動くしかないのだが、少なくとも、今利上げをする理由はない。少なくとも、為替の理由を前面に出して利上げをするのは国際ルール違反になる。
つまり、金融政策当局は為替を触ってはいけない。為替はあくまでも円の需給、ドルの需給でもって相場で決まってくる、市場で決まってくる。だから政策的に為替レートの水準を触ってはいけない。財務省は、乱高下を防ぐのが仕事。だから、あまりにも円が急速に下がった場合には買い介入をすると。そういう乱高下防止のやり方は財務省の仕事。だから今回これだけ急速に円安が動いたのに、財務省が一切動いてないというのは少し不可解な気がする。
松山キャスター:今回の金融政策決定会合の直前には、日銀の植田総裁などから若干利上げの可能性を示唆するような発言もいくつか出ていた。これがいわゆる口先介入ではないかという見方もあったが、いざふたを開けてみると、ほとんど現状維持だったと。このあたりの変化についてはどういうふうに見るか。
馬渕磨理子氏(経済アナリスト):おそらくG20のなかでいろいろ向こうに交渉したところ、思ったような回答が得られなかったのではないか、というふうに思っている。つまり、日本としては急速な円安を止めたい。そのために為替介入も考えていると。できるならば協調介入も一緒にやってほしいと。プラス利上げもやっていきたいというふうな思いはあったと思うが、今のアメリカにとってドル高は優位。国内の物価がどんどん上がっているなかで、ドル高を修正するような政策というのはアメリカが応じるわけがない。
なので、日本が円高に向かわせるというところに関しては、なかなか了解が得られなかった。加えて、イエレン財務長官が、為替介入というのは極めてまれな環境でしかできないというふうなことを言った後、日本の高官のトーンが全部変わったので、やはりアメリカの物価を止めるということが国際的な命題であって、そこに日本も協力するべきだというところが一致したんだと思う。しかし、とはいえ、やはり、どんどん為替が円安に進んでいくところを止めなければならないところはあるので、単独介入はあるのではないかなと見ている。