日本は、なぜ「シー・シェパード」に弱腰なのか 「海賊」と認定しない理由とは?
このようなシー・シェパードの行為が「海賊」であることは国際的に明らかだ。米国の第9巡回控訴裁判所は2013年2月25日、「船舶を衝突させ、酸入りのガラス瓶を投げつけ、プロペラや舵にダメージを与えるために金属で補強したロープを水中で曳航し、フック付きの発煙筒などを発射し、ハイパワーのレーザーを照射する行為は、たとえ自分の目的がいかに高尚なものであると信じていても、疑いなく海賊である」と断定し、日本の調査捕鯨船から500ヤード以内への接近禁止を命令。それでも妨害行為をしたシー・シェパードに対して損害賠償を命じ、今年6月に255万ドルを支払う合意が成立している。
そもそも国連海洋法条約は第101条で、「海賊」を「私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、拘留又は奪略行為」と定義付けている。国際的にはシー・シェパードは、まぎれもない「海賊」といえるのだ。
なぜ日本政府は海賊と認定しないのか
だが冒頭で述べたように、日本政府はシー・シェパードの行為は同条の「私的目的」に当たらないと判断し、「海賊」と認定していない。たとえば2011年8月10日の衆議院海賊行為への処罰並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会で、外務省の長嶺安政国際法局長(当時)は国連海洋法条約第101条の「私的目的」に該当するかどうかについて「個々の事例の状況に照らして判断される必要がある」と述べた上で、シー・シェパードの行為が海賊行為かどうかについては「一概に申し上げることはできない」と答弁した。
しかしその解釈は妥当なものか。日本捕鯨協会顧問を務める和田一郎元衆議院農林水産調査室長も、「確かにシー・シェパードは私利私欲で捕鯨船を略奪しているわけではないので、直接的に『私的目的』に該当しないともいえる。しかし寄付金を集める目的で暴力行為を行って莫大な金銭を得るということは、結果的に『私的目的』にならないのか」と疑問視する。
日本は昨年3月、国際司法裁判所の調査捕鯨訴訟で敗訴した。「科学的調査に当たらない」と判断されたその原因のひとつが、シー・シェパードの妨害行為によって十分なデータが集められなかったことだ。
そして今年、日本は新たな計画書を策定し、12月に南極海で調査捕鯨を再開する予定だが、シー・シェパードなど反捕鯨団体の反対活動は、ますます激化することが予想される。
過激化するシー・シェパードを封じ込めるためには、まずはシー・シェパードを「海賊」認定すべきだろう。そうやって封じ込めなければ、安全な調査捕鯨は進まず、結果として、商業捕鯨復活への道は開けない。
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