令和「シティーハンター」は"適切ギリギリ"な傑作 Netflix版は鈴木亮平主演に「歌舞伎町」ロケ

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獠(鈴木)と腐れ縁の刑事・野上冴子(木村文乃)
日本最大の歓楽街・歌舞伎町で撮影されたシーンが印象に残る。写真は獠(鈴木)と腐れ縁の刑事・野上冴子(木村文乃)(写真:Netflix)

具体的な撮影場所は、シネシティ広場と歌舞伎町一番街、新宿東宝ビル前のゴジラロードなど。人の少ない深夜から朝⽅にかけて撮影が行われ、撮影場所から細かなカメラ位置に至るまで警察許可を得たうえで、獠や香が歌舞伎町を駆け抜けるシーンが実現したことが公式資料に記されています。一番の難関は、新宿東宝ビル前を獠たちが走っていくカットだったそうで、約400人のエキストラが参加しています。

全世界配信を前に4月23日に行われたワールドプレミア上映イベントでもシネシティ広場が使われました。街を巻き込みながら、ド派手な演出で映えるPRをするところまで抜け目ないのです。

北条司が太鼓判を押す

現代の新宿ということで、トー横界隈の家出少女にも焦点を当て、事件のカギを握るコスプレイヤー役をグラビアアイドルの華村あすかが演じています。これは原作にはない新たなストーリーです。事件そのものだけではありません。突然事件に巻き込まれてしまった兄の死をきっかけに「一緒に仇を取ってよ!」と香が獠に懇願する2人の原点となるシーンまで作られています。つまり今回、獠と香がバディを組むことになった「はじまりの物語」として描かれ、前日譚として作ったのがNetflix映画「シティーハンター」なのです。

華村あすかが演じるトー横周辺で寝泊まりする若者
グラビアアイドルの華村あすかは、トー横周辺で寝泊まりしながら人気コスプレイヤーとして成功を夢見る若者を演じる(写真:Netflix)

製作陣に「好きにやってくれ。でも面白くないとダメだよ」と伝えた原作者の北条司が作品を観た率直な感想は「楽しかったですし、本当に面白い。みなさんが思う『シティーハンター』って、新宿でこうやって獠たちが飛び回っているようなイメージなんだろうなと。それを現実として見せてくれたという感激は、多くの人に味わってもらえるんじゃないか」というもの。全肯定した公式コメントを発表するほど、その仕上がりに太鼓判が押されています。

伝言板のシーン
伝言板のシーンから始まり、TM NETWORKの「Get Wild」のエンディングで着地する(写真:Netflix)

新宿東口の伝言板に書かれた「XYZ 妹をさがしてください」というメッセージから始まり、TM NETWORKの「Get Wild」のエンディングがかかるまで、1時間44分があっという間に感じるはず。難点を強いて言えば、ヒットドラマ「VIVANT」を観た人にとって、あやしい人物が明け透けの配役があったところぐらいでしょうか。

ただ、それさえも洒落として捉えることができるほど。獠と香の最後のワンカットの良さが効いています。まるで来週に続きがあるような余韻の残し方まで粋なのです。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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