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米国の追加支援でウクライナ軍はどう変わるか パトリオットにF16戦闘機、砲弾枯渇状態に恵みの雨、

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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本稿執筆時点で再開されるアメリカからの軍事支援の具体的内容や供与時期は不明だ。しかし、今後のロシア、ウクライナ両国の軍事力の比較を部門別で大まかに占ってみよう。

まず、砲弾だ。現状でロシア軍は5対1、場所によっては10対1の比率でウクライナ軍を保有数で圧倒すると言われている。このウクライナ軍の劣勢はアメリカからの砲弾供給再開で相当埋まるだろう。

最近、榴弾砲などの火砲とは別に、両軍にとって重要な戦力になっているのが攻撃用ドローンだ。ドローンは「砲弾」には含まれていない。ドローンの保有台数でみると、キーウの軍事筋はウクライナがロシア軍の倍を保有していると明らかにした。

ウクライナ防衛網の穴を埋める

ウクライナのドローン部隊は最近、攻撃してきた戦車などを大量に破壊するなど、ロシア軍にとって大きな脅威になっている。

逆にウクライナにとって、過去1カ月で新たな脅威となっているのは、エネルギー施設や住宅地域へ集中的なミサイル攻撃を加えるロシア軍の新戦術だ。軍事筋は、これによって生じた発電能力の喪失が「政府の公表以上に極めて深刻だ」と語った。

また2024年4月中旬には、北部チェルニヒウ市の人口密集地にミサイル3発が撃ち込まれ、20人近くが死亡した。ゼレンスキー大統領は防空システムが十分あれば防げたと口惜しさを露わにした。

発電施設への集中的攻撃の背景には、ゼレンスキー政権が現在必死に進めているドローン兵器の生産を止める狙いもあると言われている。

この状況をもたらしたのは、ウクライナ側の防空網にできた大きな「穴」だ。

ウクライナは、アメリカやドイツが2023年夏以降にウクライナに供与した高性能地対空ミサイルシステム「パトリオット」で、これまでパトリオットがキーウ、ハリキウ、オデーサ、東部など最重要地域へのミサイル攻撃を効果的にしのいできた。

しかしロシア軍の巧みなじゅうたん攻撃によって、次第にパトリオットの数が足らなくなり、防ぎ切れなくなったのだ。これにロシア軍も気づき、ミサイル攻撃が激しくなった。

このため、ウクライナにとって現在最も緊急な課題は、新たなパトリオットの確保だ。ゼレンスキー大統領は全土を守るためには25基のパトリオットが必要と述べたが、当面7基がすぐに必要としている。

これを受け、米欧から呼応する動きが出ている。最近ウクライナへの軍事支援で積極姿勢に転じたドイツが1基を追加供与する方針を明らかにした。また北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長も、NATO加盟国が防空システムを追加供与することで合意したと明らかにした。

数量や供与時期は不明だ。今回の支援再開決定を受け、アメリカも追加供与する可能性がある。しかし、表明された供与の規模ではまだ足りないとみられる。

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