ガザめぐりイスラエルとイランが戦い合う理由 イランを国際的に孤立させようとするイスラエルの思惑

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イランに対してどの程度の攻撃を仕掛けたのか、どの程度の被害があったのかは明確ではない。イスラエルを飛び立った戦闘機がシリア、イラクの上空を抜けてイランを攻撃したとの指摘もある。

ただ、イランの攻撃に比べるとかなり小規模なものだった。イランのアブドラヒアン外相は「空爆やドローンの攻撃ではなく、おもちゃのようなものだった」と述べている。

両国とも戦争の拡大は望んでいないが…

イラン・イスファハン州には核施設があるが、イラン国営テレビは「核施設に被害はない」と報じている。今回の攻撃は、イスラエルがイランの防空システムをかいくぐり、核施設を射程に収めているとのメッセージだと取る向きもある。

現状を見る限り、イスラエルもイランもこれ以上の戦争拡大は望んでいない。それでもなお、イスラエルとしてはハマス、ヒズボラ、フーシ派という抵抗の枢軸を影で操るイランを「表舞台」に引きずり出すために、一連の攻撃を行おうとしたのか。

何正面もの戦いを強いられているイスラエルにとって、強大な軍事力を誇るイランへの直接攻撃はかなり危険な賭けである。けれどもイランという「ラスボス」を世界の批判にさらさせ、孤立させることが目的だと考えれば、おおむねその作戦は成功していると言える。

イスラエルの外交・防衛筋の中には、「イランは大規模な戦争の準備をしてきた。彼らは戦争への意欲を高めつつあり、われわれが戦略的に対処しなければ、本格的な戦争に巻き込まれることになる」と警鐘を鳴らす人もいる。

2024年4月23日~29日、イスラエルではペサハ(過越祭)を迎える。ユダヤ教3大祭りの1つで、モーセ率いるイスラエル民族が「出エジプト」したことを記念する重要なお祭りだ。

この機会にイスラエルがさらなる攻撃を受ける可能性はゼロではない。ガザでのハマスとの戦いに加え、「危険な賭け」に出たイスラエルは今後、戦火が拡大するかどうかの岐路に立たされている。

谷内 意咲 ミルトス代表

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たにうち・いさく

1972年大阪生まれ。1998年ヘブライ大学ヘブライ言語学科、ユダヤ学学科卒。1999年ユダヤ・イスラエル・中東関連の出版社ミルトスに入社、2016年同社代表取締役に就任。ヘブライ語聖書対訳シリーズ編集委員、雑誌「みるとす」編集代表。

著書に『今日からわかる聖書ヘブライ語』『今日から読めるヘブライ語』、訳書に『賢者たちの【聖書】伝説 上・下』『ユダヤジョーク 人生の塩味』(いずれもミルトス編集部編訳)など。

NHKのBS番組「ダークサイドミステリー」の「神秘の古代ミステリー 徹底検証!日本・ユダヤ同祖論」(2023年7月13日放送)に、ヘブライ語の専門家として出演。

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