「もう不況は来ない」アメリカで広がる強気な理論 経済の常識「好況と不況の循環」は消えた?
JPモルガン・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、デビッド・ケリーは、3月11日の投資家向けレターで、ライダーの「衛星」論に極めて近いことを述べている。
「経済記者や市場ストラテジストたちは、私たちが景気循環サイクルの初期、中期、後期のどこにいるかを論じることが多い。だが、そのような見方は、アメリカ経済の動きに関する時代遅れのモデルに基づいている」
農業・製造業化型経済から消費主導型へ
全米経済研究所(NBER)によると、アメリカ経済は1850年代から1980年代初頭までの間に平均して18カ月間の不況を30回経験したのに対し、不況の合間の景気拡大期は平均して33カ月にとどまっていた。
このようなパターンとなっていたのは、ケリーらエコノミストたちの説明によれば、景気循環性の高い産業、すなわち現在では国内総生産(GDP)の一部にしか過ぎない製造業と農業が、かつてはアメリカ経済の主軸だったことと関係している。
製造業は現在、GDPのうち約2兆3000億ドルを占め、約1200万人を雇用し、間接的に別の分野の国内雇用を支えている(例えばマッキンゼーの試算によると、製造業の雇用1件につき関連産業で7~12件の新規雇用が生まれるとされる)。
しかし、消費主導型となった現在のアメリカ経済の大部分は、サービス業(ヘルスケア、自動車修理、ネイルサロン、カスタマーサービスなど)で構成されており、その規模は30兆ドル近くに達する。