「もう不況は来ない」アメリカで広がる強気な理論 経済の常識「好況と不況の循環」は消えた?
今では、モノの生産の拡大や縮小が経済に与える影響は以前より小さくなっているということだ。家計の総支出が近年比較的安定していることは、アメリカが不況を回避できている重要な要素となっている。
リーダーは顧客向けの書簡の中で、現代のアメリカ経済は、昔ながらの好不況のサイクルにさらされにくくなっている、と論じた。豊かな消費者のサービス志向が強まり、工場や農場に対する依存度がかつてないほど下がったというのが、その主な理由だ。消費支出は経済全体の約70%を占めるようになっている。
「何らかの巨大な経済的ストレスでもない限り、消費はそこまで大きく変化しない」とリーダーは言う。
リーダーの「衛星」理論を支持するデータの1つは、新型コロナウイルスのパンデミックが世界経済の足かせとなる前には、経済の広範な弱体化は起こっていなかった、というものだ。
これは、現在のトレンドと整合性がとれている。1980年代初頭以来、景気後退は4回しか起こっておらず、平均期間も9カ月なのに対し、景気拡大局面の長さは平均して104カ月となっている。
現在の雇用の伸びも今年4月で40カ月目に入っている。
新「狂騒の20年代」? 元祖は大恐慌で幕
カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスの学部長アン・ハリソンは「余計なことを言って、この好況を台なしにしたいわけではないが」と取材に語り、景気拡大に対する自信のピークは、景気が転落する直前にやって来ることが多いと指摘した(新たな「狂騒の20年代」が話題になることが増えているものの、1920年代は良い終わり方をした時代ではない)。
これまで同様、心配すべき理由はある。民間市場でほとんど監視されることなく融資を行う「シャドーバンク(影の銀行)」の出現と急速な成長は、多くのエコノミストや保守的な規制当局を不安に陥れている。