「ぬいぐるみと暮らす大人たち」の少し意外な本音 「ぬいぐるみ病院」を訪れる人々が大切にするもの
堀口:亡くされた奥さまの「分身」として(ぬいぐるみに)接している旦那さまが来院されたこともあります。いっしょに旅行に行かれたりして、心のよりどころにされている。どうしようもないつらさ、悲しみを受け止める存在なんですね。
もうぎりぎり、あと糸一本のようなところで生きている方が、ぬいぐるみさんの存在を頼りに、自分のなかに「生きる意味」を見いだそうとしている。そこに、たくましさのようなものを感じることもあります。
日本古来のアニミズム「万物に命が宿る」といった感覚と、なにか通ずる部分もある気がします。
ぬいぐるみ病院の存在が誰かを力づける
――最後のお話で、こやまさんは「ぬいぐるみ病院のやさしさにふれた人たちは、ぬいぐるみへの思いがより強く濃くなっているように感じました」と書かれていますが、どうしてそうなるんでしょう?
こやま:たとえば、入院中に病院のスタッフの方がご家族と交わすメールの文面が、とても優しいんです。「今日はこんなことしましたよ」とか「お昼寝をしましたよ」とか。そうやって、自分が大切にしているぬいぐるみを、別の誰かが同じように、またはそれ以上に大切にしてくれることを、みなさんとてもうれしく感じて、感動していらっしゃったりします。
ぬいぐるみ病院さんの世界観がとても豊かで深いから、その存在がすごく誰かを力づけ、前向きにしてくれる。すごいことだな、と思います。
堀口:(ぬいぐるみが)入院されるときも、ご家族の方はこれまでの思い出がよみがえって涙を流されることもあるんですが、お迎えのときも涙いっぱいで再会されます。それは、治療の間、離ればなれになることで「これまでどれほど安心を与えてくれていたか」と、その存在の大きさに気付かされたり、ご家族のなかでいろんな変化が起きるからかなと思うんです。
こやま先生もおっしゃったように、自分だけの秘密だったことが、同じように大事にしてくれる人がいたことで、心が解放されるといいますか。「自分らしく生きていってもいいんじゃないか」という「自己ケア」みたいなことにもつながっているのかもしれませんね。
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