「なぜ人類は絶滅しない?」哲学者が出した"答え" 「進化したサピエンス」がなぜ生きづらいのか?

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簡単に言えば、なぜ僕らは猫になれないのか?

なぜ進化のプロセスを経てなお、僕らは猫のような安寧の獲得に失敗し続けているのか?

現代社会というシステムに不適応な僕ら

僕らサピエンスという種はこの環境に適応していないように見える。精神と社会とのミスマッチがあるように思えます。

もし、この身体、脳が現代社会というシステムに適応的であったとしたら、たとえば僕らはわざわざGoogle カレンダーに予定を書き込んだりする必要などないはずです。

僕らはしばしば、忘れてはいけない予定を忘れてしまう。それが重大な仕事の予定であったり、大切であるはずの家族との予定であったりしたら、文字通り死活問題となります。社会的な生存を危うくする失策です(少なくとも肩身が狭くなるはずです)。

死活問題であるにもかかわらず僕らの脳は、そんな予定を意識の外におき、僕らに予定をすっぽかさせる。ということは、現代社会の生活様式は脳のデフォルトの記憶容量を上回っていることになります。

死活問題であるにもかかわらず、僕らは予定を忘れてしまう。だからこそ、数週間後の予定ですら、Google カレンダーに記入し、記憶を外部化させたりするのです。

あるいはSNS。

SNSは単なるテキストデータ、画像データの蓄積のはずです。ですが、ひとはSNSに疲れてしまう。それはSNSが承認と嫉妬が交錯する欲望の場となっているからでしょう。

そこでは、人々は「私」という美術館を作り上げています。「私」の経験という履歴の中から、他者に見せたいもの、見せられるものだけを丁寧に選別し、ガラスケースに入れた美術品のように展示しています。

そして、その展示を見たひとは、自分の持っている美術品と価値を比べてしまう。私が努力して集めた絵画より価値のある絵画があったと嫉妬し、彼女の彫像よりも私の収蔵している作品の方が美しいと自己正当化する。

かくして僕らは他者からの眼差し、そして他者への眼差しに疲れ果てる。

なぜこのようなことが起こるのか?

次ページ僕らと現代社会という「環境」
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