がん診断の前も後も孤軍奮闘してきた彼女は、同級生たちの応援に幸せな気持ちにしてもらえた。その発見が、長女の言葉として先のエピローグを書き出すきっかけになった。
「母さんのように、ぐちゃぐちゃに血迷った痕跡を残そうが、濃い生のラインを引いて行けば、いいじゃん。弱くて強い、その生々しさが私は好きだよ」(前掲書から引用)
「弱くて強い、その生々しい自分」を生きている証し
あやしい整体師にハマッてしまったのも、葛藤する自分は生産性が低く、弱くて認められなかったからだと彼女は振り返る。
「誰にでも強い自分と弱い自分がいて、だから葛藤も生きているうちはなくならない。でも当時の私は真逆で、問題を常に冷静に解決できる人が“自立”した人で、優秀なのだと思っていました。行きすぎた能力主義を否定しながら、その価値観に誰よりも当時の私自身が強くしばられていたんです」(真衣さん)
子どもたちに能力主義の歪みをわかりやすく伝えようと、整体師にハマッた弱い自分さえ包み隠さずに書くことで、ようやくそれに気づけた。
葛藤とは「弱くて強い、その生々しい自分」を生きていることの証しだった。
「本を書くことが、生き直しのセラピー(治療法)みたいでした」(真衣さん)
一方、彼女が本を通して若い世代に伝えたかった、「『能力』は時と場所によって目まぐるしく変わる。だからいたずらに一喜一憂する必要はない」という思いは、追い立てられるように今を生きるわたしやあなたにもずしんとくる。
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