脳出血で倒れた30代男性、自ら死を願った驚愕理由 「長生きしたら不幸」と思えてしまう日本の問題点

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いまの日本は、主要先進国の中で最も社会保障が貧弱な国の1つになりかけている。国は、政治家は、国民を恐れていない。事態は改善されず、安心して生きていけない社会の歪みが、愛する人の死を願う社会へと私たちを誘う。本当にこのままでいいのだろうか。

いまのわが家は、子どもの数がさらに1人増え、4人になった。だけど、以前のような不安はない。なぜなら……母と叔母が火事で死んだからだ。私は、2人の命と引き換えに、生活の安定を得ることになった。

最後まで私の幸福を願っていた母と叔母

2人が亡くなってすぐ、みんなで食事に行った、あの日の風景を夢に見た。

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母はやはり私の声に応じようとはしなかった。でも、丁寧に食事を済ませたあと、私の胸の向こう、私の心のずっとずっと向こうのほうを眺めながら、「ニコッ」と微笑んだ。それは、邪気のない、天使のような、かわいらしい笑顔だった。

「なんね、お母さん、子どものごたる顔(子どものような顔)で笑って。かわいかねー」

なぜあのとき、そう言ってあげられなかったのだろう。母と叔母は、最後の最後まで、私の幸福を願い、そして迷惑をかけまいと死んでいった。目が覚めたとき、私の頬は涙で濡れていた。

井手 英策 慶應義塾大学経済学部教授

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いで えいさく / Eisaku Ide

1972年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。日本銀行金融研究所、東北学院大学、横浜国立大学を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専門は財政社会学。総務省、全国知事会、全国市長会、日本医師会、連合総研等の各種委員のほか、小田原市生活保護行政のあり方検討会座長、朝日新聞論壇委員、毎日新聞時論フォーラム委員なども歴任。著書に『幸福の増税論 財政はだれのために』(岩波新書)、『いまこそ税と社会保障の話をしよう!』『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)ほか多数。2015年大佛次郎論壇賞、2016年慶應義塾賞を受賞。

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